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ペンシルベニアの食べ物というと、フィラデルフィアのクリームチーズを一番に思い浮かべます。
他に有名なものでは、ハーシーズ・チョコレートや、ケチャップに代表されるハインツ食品。それから地元のポテトチップスも名を馳せています。
また、「ペンシルベニア・ダッチ」という言葉があるように、ドイツ系移民の料理も豊富。
移民系で言えば、イタリアンも幅を利かせています。そんなペンシルベニアの食べ物を探ってみました。
ペンシルベニアの有名な食べ物
肉類
Chipped Ham
ハムの塊やトリミングに調味料を混ぜてローフ状に固めた後、機械でスライスしたものです。スパムとよく似ていますが、各社が独自の味付けでブランド商品を出していて、これにBBQソースを付けてバーガーパンに挟んだものが人気。
Scrapple
ペンシルベニアの伝統的な朝食に出てきます。豚肉の切れ端を集めてコーンミールと混ぜ、大きいローフ形にまとめてからスライスして火を通したもの。ペンシルベニア・ダッチのエスニック・フードが定着しました。
野菜類
Pittsburgh Salad
主にペンシルベニア西部の方で食されるサラダで、レタスの他数種の野菜を加え、焼いた肉や鶏に、チーズとフライドポテトをあしらったもの。フライの種類はレストランによって様々です。
Zucchini Planks
ズッキーニは、元はと言えば、ペンシルベニアに移住してきたイタリア人が広めた食べ物。それをべニア板のように平たく切ってオリーブオイルを塗り、お酢や調味料をまぶして弱火で焼いて食べます。
ファーストフード系
Italian Hoagie
他の州で “Sub” と呼んでいるもの。ペンシルベニアの “Hog Island” の海軍兵たちがランチタイムに好んで食べていたサンドイッチを、“hoggies” と呼んでいて、そこから名前が付いたようです。
長いイタリアパンに、サラミやカポコロ(コッパ)といったランチミートにプロヴォローネチーズ、トマトやレタスに玉ねぎなどの野菜類を挟み、オリーブオイルやオレガノをかけて作ります。
Philly Cheesesteak
名前だけ聞くと、チーズを載せたステーキなのかなと思ってしまいますが、長いホギーロールに、焼いた薄切り肉と溶かしたチーズを挟んだサンドイッチのこと。ペンシルベニアののアイコン料理ともいえる食べ物で、1930年代から親しまれています。
Pitts-Burger
ピッツバーグの “Primanti Brothers” による大型サンドイッチのこと。ビーフパティにトマトやレタスにとどまらず、更にコールスローとフライドポテトを挟んだものです。どうやってこの厚さにかぶりつくんでしょうね?!
Roast Pork Sandwich
ローストポークサンドイッチは、どこでもよく聞く名前ですが、オリジナルが作られたのは、ペンシルベニアのイタリア移民のコミュニティーだったと言われています。ホギーロールに、低温で調理した豚肉を使うところが特徴です。
パン・パスタ類
Mushroom Strudel
大まかに言って、アメリカのマッシュルームのほぼ半分は、ペンシルベニアのチェスター群で育っていると聞きます。フィロ生地に、クレミニや椎茸、ポートベローなどのマッシュルームを濃厚ソースに絡めて、クリームチーズと一緒に仕込んでベークしたものです。
Pretzels
ペンシルベニアって、実はアメリカで消費するプレッツェルの8割近くを生産しているのです! 18世紀中頃から19世紀にかけて移り住んできた、ペンシルベニア・ダッチ(ドイツ系移民)の主食でもあったので、なるほどうなずけます。
Soft Pretzel
プレッツェルを、強いてハードな乾燥したスナックと、ソフトなパン風に分けると、ペンシルベニアのストリート・フードになっているソフト・プレッツェルは、ユニークな形をしています。
普通他の州で見られる一般的なものは、緩い結び目のような、日本語の平仮名の「ぬ」の字にも似た形ですが、ペンシルバニア版は長方形なのです。この形で焼くことで、オーブンのスペースを最大限に生かせるからなんですね。
Stromboli
1950年に、フィラデルフィアの、“Romano’s Italian Restaurant & Pizzeria” で発明されたのがストロンボリ。少し中身がカルツォーネに似ている、イタリアのターンオーバーです。
ピザ生地かパン生地に、モッツァレラなどのイタリアンチーズに、サラミやカポコロなどを薄切りにした加工肉と野菜類をくるっと巻いて焼きます。
Tomato Pie
トマトパイというと、何か普遍的などこにでもある食べ物のように聞こえますが、実はフィラデルフィア生まれなんですね。1900年代の初めに、パン屋さんが残りの生地を使ってトマトソースを塗り、チーズを振りかけて出したのが始まりです。
その他
Heinz’ ketchup
ケチャップというと、アメリカではハインツ。この会社は当初、シャープスバーグで設立されましたが、現在本社はピッツバーグにあって、ケチャップ以外にも、ソースやディップ、コンディメント類など、数十種の食品を生産しています。
Wedding Soup
ペンシルバニア州の中でもイタリア移民の多いピッツバーグでは、このイタリアンウェディングスープが人気を誇っています。鶏肉やミートボールに、ほうれん草などの緑黄色野菜、胡椒粒大のパスタをたくさん入れて、最後にチーズをトッピング。
これに、チャバッタパンとかあるとお腹は大満足。野菜や肉を一緒に煮込んでいくプロセスを結婚の家庭に例えているのですね。うまく混ざり合ったものは美味しいはず♪
スナック類
Herr’s Chips
ペンシルベニアのノッティンガムに本部を置くポテトチップスの会社で、Jim Herr という人が、1946年、当時21才の時に立ち上げました。特徴としては、味付けがスパイシーで濃いこと。今ではチップス以外のスナック商品も多く出しています。
Utz Potato Chips
ペンシルバニア州は、アメリカの中でも、“the Snack Capital” と呼ばれるほど。こちらは、Utz夫妻が1921年に創業していて、裏庭で始めた仕事が、どんどんライバル会社を吸収していって大きくなり、多岐に渡るスナック商品を扱っています。
デザート類
Banana Split
バナナ・スプリットは、アメリカを代表するデザートの1つ。1904年に、ペンシルベニアのラトローブという所で発明されました。
基本のパターンは、細長い皿にバニラ・チョコレート・ストロベリーの3色アイスクリームを並べてチェリーを飾り、その両側に縦半分に切ったバナナを置き、ナッツを振りかけ、最後にチョコレートソースを全体にかけます。
作られた当初は、マシュマロソースをかけていたようですが、最近ではあまり見ません。店によっては、キャラメルソースをかけるところもあります。一体、何カロリー?!
Burnt Almond Torte
ピッツバーグにある、“Prantl’s Bakery” が作る、バーントアーモンドトルテは、かつて、ハフポスト(昔のHuffington Post)が、“the best cake in America”と讃えたデザートです。早速、作ってみました♪
イエローケーキとカスタードクリームでレイヤーを作り、全体を真っ白のバタークリーム・フロスティングで覆い、ナッツを押し付けていきます。このナッツがトルテの決め手。
スライスしたアーモンドを砂糖と卵白と水を混ぜた物に絡め、黄金色になるまでトーストして使います。ケーキ生地には、チョコレートバージョンもあります。
Funnel Cake
アメリカの夏のカーニバルには必ずと言っていいほど出てくるファンネルケーキ。ペンシルベニア・ダッチがもたらしたオリジナルはイーストを使っていましたが、後にもっと簡単にできる生地で作り始めました。
パンケーキを作るときのような生地を漏斗に入れ、揚げ油の中に不規則な円を描くようにして垂らしていき、黄金色になるまで揚げます。あとは粉糖を振りかけるだけ。
Hershey’s Kisses
超有名なハーシーのキスチョコが生まれたのは、1907年のこと。今ではもちろん機械で大量生産しているラッピングも、当初は手で包装していたとか。ちなみに、当時は小さいキャンディーのことを「キス」って呼んでました。
他にも、人気キャンディーの、“Reese’s Peanut Butter Cups” は、元ハーシーの社員が独立して作り、超ヒット商品になりましたが、後にハーシーと合併。リコリスで有名な、“Twizzlers” も今はハーシーに吸収されています。
Irish Potato Candy
アイリッシュデーが近づいてくると話題になるのが、このポテトそっくりのキャンディー。主にペンシルベニアの東部で人気があります。バターとクリームチーズを混ぜて粉糖を足し、ココナッツ・フレークを加えて固めて丸め、全体にシナモンをまぶして出来上がり!
Peeps
イースターには欠かせないピープスは、ウクライナ移民の、サム・ボーンさんがペンシルベニアのベツレヘムで始めた、“Just Born” 会社で作られています。ひよこの形をしたマシュマロ菓子は人気を呼んで、後に兎の形もでき、色や味も大幅に増えました。
Philadelphia-style Vanilla Ice Cream
卵を使わないで、牛乳とクリームと砂糖だけで作ったアイスクリームのことです。初めは、クウェーカー教徒のバセット氏がニュージャージーの農場で作っていたものを、後にフィラデルフィアで売るようになって定着したのが経緯。
Shoofly Pie
ドイツ系移民のペンシルベニア・ダッチがよく使っていて、19世紀後半に人気の出た、“Shoo Fly” というモラッセズのブランドから付いた名前です。
薄いクラストをベースに、濃厚なモラッセズのフィリングで、ケーキ・クラムをトッピングした、“wet-bottom pie” は、とてもスティッキーなパイになっています。
Tastykakes
フィラデルフィアのネイビーヤードに本部を置く、1914年にできた、“Tasty Baking Company” のブランド。カップケーキやクッキーバー、パイやドーナツなど数々のスナック商品を作っています。
中でも人気のフレーバーには、ピーナッツバター・キャンディーケーキや、バタースコッチ・クリムペットなどがあり、主に東海岸よりの州で販売。
Whoopie Pie
ペンシルベニアのアーミッシュに根付いている、クリーミーなフィリングをソフトケーキクッキーでサンドイッチにしたお菓子。私も何度か作りました。ちなみに起源については、メイン州と論争があります。
名前にはパイが付いていますが、どの菓子カテゴリーに入れていいものか悩むところです。ピッツバーグでは、“Gob” と呼んだり、その形がオレオクッキーに似ていることから、“BFO” (Big Fat Oreo) と呼ぶこともあるようです。
Wibur’s Chocolate
さて、キスチョコと言えば、上記に挙げたハーシーの物、という認識だと思うのですが、実はペンシルベニアのリティッツにある、ウィルバーというチョコレート会社が、ハーシーより10年ほど前に、原型となる “Wilbur Buds” を作っていたのですね。
でもハーシーが作り始めてから世の中に広まったので、州外でこの事実を知る人は少ないと思います。私も調べてみるまで知りませんでした。この店の博物館に行けば、キスチョコのオリジナルを確認することができますよ。
ペンシルベニアで人気の飲み物
Birch Beer
白樺の樹液を抽出して作った炭酸系ソフトドリンクです。バニラやユッカ、リコリスなど、“root beer” と共通のフレーバーも含みますが、バーチの木にはいろんな種類があるので、色の出方も風味も微妙に違って、より複雑な味わいが楽しめる飲み物。
Ice Cream Float
炭酸系ドリンクにアイスクリームを浮かべるアイデアは、19世紀の終わり頃にフィラデルフィアのソーダ店経営者のロバート・グリーンさんが発明したもの。競合するソーダ・ファウンテンで、他店との差別化を図ろうと考え付きました。
いつの世にも、画期的なアイデアを出した者が勝ちですね。“root beer float” とか、“coke float” とかが人気ですが、上記のバーチビールにチョコレートアイスクリームを浮かべた、“black cow” も美味しそう♪
Water Ice
水と氷という、何とも意味がつかみにくいネーミングですが、“Italian Ice” や “Slushie” とも微妙に違い、ベルベットタッチののど越しがあります。砂糖と水と果物味でできているシャーベット風アイスドリンク。
“John’s Water Ice” は、South Philly のアイコンとして1947年から長い間親しまれ、“the best all-natural water ice” を自負しています。少し果実片も入った、“lemon water ice” が人気。
こうしてみると、ペンシルベニアって、ファーストフードから菓子類やデザートに至るまで、スナック系の食べ物が多いですね。やはり、「スナックの首都」と呼ばれるだけあります!
親戚がいるメリーランドに行ったとき、ペンシルベニアにも立ち寄ったことがありますが、当時はハインツとハーシーとフィリーのクリームチーズくらいしか知りませんでした。
今度また行く機会があったら、もっとローカルで生まれた食べ物を経験したいです♪