この記事は約 11 分で読めます。
デラウェアと食べ物、というキーワードを聞くと、日本の方なら、すぐに葡萄のデラウェアを思い浮かべると思いますが、それはオハイオ州のデラウェアから来ているので、別の話になります。
デラウェア州というと、メリーランド州の東側に接していて、デラウェア湾をはさんで向こう側にはニュージャージー州があります。
やや北東に位置しているのですが、わずかに南部料理の影響も感じられます。では、デラウェア州にはどんな食べ物があるのか見ていきましょう。
デラウェア州で人気の食べ物
チキン
アメリカの各州には州の鳥というものがあって、デラウェア州はブルーヘンチキン “blue hen chicken” が、州鳥に指定されています。
そもそもデラウェア州における鶏の数は、人間と比べて何と250対1ほど、その数が勝っているんですね。チキンは畜産業の柱になっているので、当然鶏料理にも名物が生まれてきます。
デラウェア湾沿いのビーチに立ち並ぶ露店のフライドチキンや、バーベキューチキンの人気は言うまでもないのですが、主に州の南部で親しまれている食べ物があります。
Chicken and Slippery Dumplings
一言でいうと、シチューもどきのパスタ料理でしょうか。英語で “dumpling” というと、中華料理の餃子やシュウマイ、小籠包に至るまでを総称して言うことが多いのですが、この料理はむしろパスタと言った方が近いと思います。
ここでダンプリングに当たる物は、チキンと野菜を煮たスープ少々に粉類と調味料を混ぜて生地を作り、それをのばして5cm四方に切ったもので、餃子の皮を少し分厚くしたような感じです。
あるいは、大きいラビオリの生地でフィリングが入ってないものを想像されてもいいかと思います。これをチキンを煮たスープに入れて煮ると、スープがグレービー状になり、ダンプリングに絡まって独特の料理が出来上がります。
シーフード
Blue Claw Crabs
カニは普通赤いものを想像しますが、この蟹の爪は本当に青いんです。(もちろん、茹でると赤くなります。)大西洋の西側でよく捕獲される種類で、体長は大人になってもせいぜい20cm少々。
難しい科学名を訳すと、「美味しくて美しい泳ぎ手」と言うのだそうです。ブルークラブの歯はお腹の中にあって、そこで他の小さいカニや貝に魚類をかみ砕くんです。面白いですね。
ファーストフード類
Capriotti’s Bobbie
デラウェア州で一番有名なサブマリン・サンドイッチで、1976年創業の “Capriotti’s” というレストランの看板メニューである “The Bobbie” は、感謝祭の翌日に多くの家庭で出てくる具材で作られています。
サンクスギビング・ディナーと言えばターキー。ゆっくりローストした七面鳥の肉を引き裂いたものに、クランベリーソースとスタッフィングを詰めたサブマリン・サンドイッチは、今では他の多くの州でも人気者。
フランチャイズチェーンになって、アメリカの首都、ワシントンDCにもレストランができた2013年には、ジョー・バイデン(次期)大統領も訪れたとか。何てったって、地元の名物なんですもんね。
Grotto Pizza
人々がまだピザと言う食べ物に馴染みがない頃の1960年に、デラウェア州レホボスビーチにできたピザ・ショップは、当初ビーチシーズンのみオープンしていたのが、人気が出て州内に広がり、今ではメリーランド州とペンシルバニア州にも支店があります。
ほとんどのピザがモッツァレラチーズを使うのに対し、ここのピザはチェダーチーズを使っていて、やや甘味のある薄い生地で、その上にとぐろを巻くようにかかっている秘密のソースが決め手のようです。
The Nic-o-Boli
同じく “Rehoboth Beach” には、もう1つアイコンのレストランがあります。“Nicola Pizza” と言って、こちらはイタリア移民の子どもが始めたファミリー経営。1971年に借金して初めて出したレストランは、わずか20人が座れるほど。
それが後に200人収容のレストランに伸び、10年ほど前には、大型テレビが何台も並ぶスポーツバーを含む2階建ての2号店もできました。ここの目玉は、ストロンボリと言うよりはカルゾーンに近い感じ。やっぱり秘伝のソースがポイント。
デラウェア州は、ワシントンDCに近いので、政府関係者の利用も多いのです。何と、ジョージ・ブッシュ大統領夫妻が在任中、この “Nic-o-Boli” をホワイトハウスにお取り寄せしたとか。よっぽど美味しいのかな♪
Scrapple
スクラップルは、デラウェア州のみならず、大西洋側にあるペンシルバニア、メリーランド、バージニア、ニュージャージーと言った各州でよく食される料理で、メインの材料は豚の臓物です。
豚の各種臓器と骨をぐつぐつ煮たスープに、コーンミールその他の粉とスパイスを混ぜてマッシュにして固め、パテのようにしてサンドイッチにはさんだり、朝食のサイドとして出されます。(私は朝から食べたいとは思わないけど。)
ソース
Tatanka Hot Sauce
初めてこのホットソースの名前を見た時、「えっ、田中さんがどうしたの?」と思ってしまいました。でも、タナカではなくて、タタンカなんですね。
デラウェア州生まれのこのホットソースは、2015年のルイジアナホットソース世界選手権?で3位に入賞しました!チキンウィングにまぶしてマリネすれば、バッファローウイングができるし、タコスに加えても良し。
カクテルソースの引き締めに使ったり、退屈なスクランブルエッグにアクセントを付けたり、その使い方は自由自在です。
野菜果物類
Peaches
デラウェア州の州花は桃の花なんですね。もちろん、桃が州花に指定される以前から、このフルーツの生産量はアメリカの中でも有数で、夏の太陽の光を目一杯浴びて育つ桃は、とても甘くておいしいのです。
毎年8月の初めには、ワイオミングやミドルタウンでピーチフェスティバルが行われます。(2020年の夏は残念ながら、感染症の影響で中止になりました。)場所によってはU-Pickも楽しめます。
Lima Beans
ライマメと聞くと、ペルーを一番に思い浮かべますが、アメリカではデラウェア州が主要な産地で、ヨーロッパ人が住み着く前から栽培されていました。サコタッシュの料理に使われることが多いですが、新鮮な豆はバターで煮るだけでも十分美味しいです。
冷菓子
Delaware Ice Cream
デラウェア州にある約50の農場では、およそ5千頭もの乳牛がいて、地域経済に大きく貢献しています。夏のビーチサイドで食べる新鮮なホームメイドのアイスクリームの味は格別です。
レホボスビーチに立ち並ぶアイスクリームショップの中には、風変わりなフレーバーがあって、名前も面白いです。例えば、“Booger” と言うのは、緑のキャラメルをマーブル状に織り込んでマシュマロの粒を加えたり。
“Bacon De Leche” は、ピーカンキャラメル入りのドゥルセ・デ・レチェ・アイスクリームに、もちろんベーコンが混ざってたりします。(私は避けたい、このフレーバー。)
ネーミングもとてもユニークで、“Chocolate Thunder” とか、“Dirty Snowball” に、“Moose Track”や、“Motor Oil” など。“Cereal Killer” って、わかります? ちなみに農家直送のアイスクリームトラックもあちこちに点在。
デラウェア州で評判の飲み物
デラウェア州には北の端から南の端まで、クラフトビールの会社が点在していて、独自のユニークな味を競いあっています。中でも、ミルトンにある魚のトレードマークで有名な “Dogfish Head” のビールが人気です。
目下のヒット作は、“90 minute Imperail Indian Pale Ale” 。オーナーのサムが試行錯誤を重ね、精魂込めて作ったこのビールのファンは、「アメリカ一のIPA」だと、お墨付きを与えています。
サムが料理番組を観ていて、シェフがシチューを煮詰める間継続的に胡椒を加えていたことにヒントを得て、ビール作りにも生かしてみようと、90分間ホップを繰り返して生まれたのがこのビールだそうです。
ドッグフィッシュヘッドのビールで、IPAシリーズには、他にも “60 minute” や “75 minute” に、“120 minute” もあるので、味を比べてみるのもいいですね。サムは今日も飽くなき探求を重ねています♪
最後に、アメリカ50州の中でも、デラウェア州は1787年12月7日に、最初に合衆国憲法を批准した州なので、“First State” と呼ばれています。今まさにここから大統領が誕生しようとしているので、旬の州ですね。
食べ物で有名になることはあまりないかもわかりませんが、今後は大統領を選出した州として脚光を浴びることでしょう。注目していきたいです。