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ニュージャージー州の食べ物は、その地理的な位置から、北部はニューヨーク市の影響を強く受け、南部はフィラデルフィア料理が主流になることが多いです。
また、世界にも名を馳せている有名食品企業もいくつかあります。たとえば、缶スープの王者、「キャンベル」や、ヒスパニックのブランド、「ゴヤ」。
子どもから大人まで誰でも知っている、M&M’s のキャンディーも、最初に商標登録して製造を開始したのは、ニュージャージー州のニューアークでした。
多種多様なエスニックフードのルーツを感じさせる、個性豊かなファーストフードを中心に、ニュージャージー州特有の食べ物を探っていきます。
ニュージャージー州のファーストフード
どこにでもあるファーストフードですが、それぞれ少しずつ地域独特のユニーク性を加えた食べ物を紹介します。特にノース・ジャージーはホットドッグの宝庫です♪
サンドイッチ類
Cuban Sandwich
ニュージャージー州の中でも、ニューヨーク市の近くの端まで行くと、キューバ系のレストランが多くあります。キューバのパンに、ポークやハム、スイスチーズを挟んだ後、パニーニのようにプレスで熱して仕上げます。
パンの表面もカリっと仕上がりますが、添えているピクルスもカリカリしているのが特徴です。
Fat Sandwich
ニュージャージーの州立大学であるラトガースの駐車場で、1980年から90年代にかけて人気を博したフードトラックは、 “grease trucks” と呼ばれていて、そこで販売されていたのが、このファット・サンドイッチ。
育ち盛りの学生のお腹を満たすため、チキンフィンガーやポテトフライにオニオンリング他の揚げ物に、チーズスティックも組み合わせて作られているので、まさにその名の通り、ヘルシー志向と真逆のサンドイッチなのです。
Pork Roll Sandwich
ポークロールは別名、“Taylor Ham” とも呼ばれている食べ物です。ハードロールに、スパイスや各種フレーバーを加味した豚の加工肉と、焼くかスクランブルにした卵を載せて、溶かしチーズを垂らします。
ニュージャージー州のレストランでは、一日中いつでも出てくる定番メニューで、どういうわけか、「二日酔い」にも良いとされているのです?? 怪しげな香味料でも入っているのでしょうかね。
Sloppy Joe Sandwich
アメリカで、「スロッピー・ジョー」というと、きれいに食べるのが難しい、味付けしたソースたっぷりの挽肉が入ったバーガーを想像しますが、ニュージャージー州のの同名のサンドイッチは全く様子が違っている。
1934年に、“Town Hall Deli” で作られたサンドイッチは、ライ麦パンを3枚使い、その間に好みの加工肉やチーズにコールスローを挟んだもので、オリジナルのロシアンドレッシングがフレーバーを利かせています。
サウスオレンジにあるレストランのオーナーが、キューバのハバナに行った時に。”Sloppy Joe’s” という名前のレストランで食べたものをヒントに、シェフに似通ったサンドイッチを作るように頼んでできたのが、これだそうです。
ピザ類
New Jersey Pizza
ニュージャージー州には、ピザ屋さんが2千件ほどあるそうです。でも、ノース・ジャージーとサウス・ジャージーとでは、少し特徴が違っていて、北はニューヨークシティスタイルで、薄めのカリっとしたクラストが売り。
一方、南の方はやや厚めの生地ながら、やっぱり端はカリカリしていて、ソースとチーズ、その他トッピングとのバランスに重きを置いて作られています。
Tomato Pie
名前はパイでも、実はピザ。もっと正確に言うと、この食べ物には、固有名詞の名前が付いていて、“Trenton Tomato Pie” と呼ばれています。1936年に初めて作り始めたのが、州都であるトレントンだったというわけ。
De Lorenzo’s ファミリーが何代にも渡って作り続けているもので、薄いピザクラストの上にモッツァレラチーズを並べてから、手でつぶしたトマトを載せるのが基本のパターン。
地元の人は、これだけでも他のピザより美味しいと確信していますが、この上に更に好みのトッピングを置いてもよく、最後にソースをかけて焼きます。この、「チーズ、トマト、ソース」の置き方の順番が大切なのです!
ホットドッグ類
Chili Dogs
実は、ニュージャージー州のパターソンと、ペンシルバニア州のペインフィールドの間で、どちらがチリドッグの生みの親かという議論があるのです。
食べる方にすれば、どちらでもいいのですが、両方とも元々は、“Texas Weiner” と呼んでいて、テキサスというのが、ホットドッグの上にかける独特のチリソースを指します。
Dirty Water Dogs
ニューヨーク市の街角に出ているホットドッグカートで売っている定番ドッグは、ニュージャージー州でも定着しています。ダーティーウォーターというのは、”boiled”、つまりウィンナーをゆでて使っているのです。
カートで売っているわけなので、同じ湯を使って、恐らく一日替えないのでしょう。すると、ソーセージから出る塩分や脂分で水は濁ってきますよね。それがわかって買う人は、全て自己責任です!
Italian Hot Dog
1932年に、ニュージャージー州のニューアークで、ジミー・バフという人が発案したのが始まりです。ピザパンかイタリアンロールに、ソーセージを挟み、オニオンとパプリカを載せてから、最後にフライドポテトを詰めたもの。
でも正確には、ジミーが友人たちとカードゲームをしていた時に、奥さんのメアリーが出したホットドッグが好評で、レストランで提供するようになり、今でもバフ・ファミリーが継続して、看板メニューになっているのです。
The Ripper
単にホットドッグと言っても、焼く、煮る、揚げることもできるわけですが、この「リッパー」というのは、揚げて作っています。どうしてこのように呼ばれるのかと言えば、油で揚げる時に、ソーセージのケーシングがはじけて破れるからです。
ニュージャージー州で最も有名なホットドッグと称されていて、テレビで特集されたこともあります。名前がユニークなので、記憶に残りますよね。
その他のパン系
Buttered Roll
日本でいうところの「バターロール」は、パン生地にたっぷりバターを仕込んで焼いたものを指すと思うのですが、こちらは別の言い方をすると、”roll with butter”。つまり、バターを塗ったパン。
ニューヨーカーの影響を受けた、北部のニュージャージ州では、カイザーロールを使うことが多く、朝一杯のコーヒーのお供に最適なパンなのです。
Panzoratti
南部のニュージャージー州で人気のあるパン系は、こちら。イタリアのカルツォーネに似ていますが、どちらかと言えば、アメリカ風には、ターンオーバーのよう。
チーズとソースを詰めたピザ生地を揚げて作ったパンツェロッティは、1963年に、カムデンで始まりました。
スナック類
Disco Fries
懐かしい響きですね。あのミラーボール輝くディスコ・フロアが流行ったのは1970年代。でも驚くなかれ、このディスコ・フライという食べ物は、とっくに1940年代からあるのです。
フライドポテトの上に、とろけるモッツァレラチーズを置いて、温かいブラウン・グレービーソースをかけたもの。ノース・ジャージー発ですが、今では州全域に広がっています。
その他の食べ物や飲み物
野菜・果物
Berries
ニュージャージー州は、米国で3位のクランベリーの生産量を誇っています。“Pine Island Cranberry” という会社だけでも、世界の年間生産量の約13分の1を担っているというから、相当な量です。
また、同州のパイン・バレンズの南に位置するハモントンという地域は、「世界のブルーベリー・キャピタル」と言われるくらいで、シーズン中は各農園が U-Pick の人々でにぎわいます。
Jersey Corn
ニュージャージー州の別名は、“Garden State” 。アメリカには他にもコーンの名所がありますが、この州もその内の1つ。もぎたてのトウモロコシはキャンディーのように甘くておいしいです。
私は茹でただけで、何も付けないで食べるのが一番好きですが、アメリカのクラシックな食べ方は、茹でた後、バターをたっぷり塗って、少し塩を振って食べるのが人気です。
Jersey Tomato
ガーデンステートのもう1つの売りは、トマトです。特に、1934年に開発された、“Rutgers Tomato” と、1968年に産み出された、“Ramapo Tomato” の2種類が有名。
最近では2016年に、ラトガーズ大学が、創立250周年を記念した更に磨きをかけたラトガーズ・トマトを発表しました。
肉・魚類
Cape May Salt Oysters
19世紀の終わりごろ、東海岸での牡蠣の収穫はピークを迎え、20世紀半ばにはかなり減ったのですが、努力の甲斐あってまた復活しています。
ニュージャージー州のケープメイにあるオイスターファームでは、独特の塩味に特徴があるそうです。私は地元のレストランでも、他の各地で獲れた牡蠣を試すのが好きなので、一度どんな塩味なのか味わってみたいです。
Chicken Savory
エセックス郡に住んだことのある人なら、おそらく聞いたことのある人気の食べ物が、このチキン-セイボリー。ノース・ジャージーの、“Belmont Tavern” がとくに有名です。
ルーツはイタリア系移民の料理で、鶏を適当な大きさに切り分けて、にんにくやチーズにハーブ類をすり込んで、高温でローストし、ビネガーを振りかけて仕上げます。食べる時には、お酢とスパイス類がキューンと鼻に来るとか。
Rodizio
ロディツィオは、ブラジルで人気を博した、肉のサービングスタイル。ニュージャージー州でもスペインやポルトガル系のレストランで提供される食べ方です。ある一定の金額を払うと、サーバーが次々にいろんな種類の肉をテーブルに持ってきます。
お客さんが、もうこれ以上は食べられないと言うまでです! ミート・イーターにとっては普通の食べ放題レストランよりも中身が濃いでしょうね。野菜類のサイドも提供するらしいのですが、肉の食べすぎには要注意ですね。
デザート類
Candied Apples
日本式に言うと、お祭りの屋台や、世界では、サーカスやフェスティバルのブースで必ず目にする、あの真っ赤に光ったリンゴのキャンディーは、何を隠そう、ニュージャージー州で発明されたんですね。
ニューアークの菓子メーカー、ウィリアム・コルブさんが、砂糖を溶かして、食紅とシナモンを加味したシロップに林檎を漬けて、1908年に、たった5セントで売りに出したのが始まり。
その後、ニュージャージー州に広がり、アメリカ全体に知られるようになり、世界中の人が作り始めたというわけです。
Pastel de nata
パステル・デ・ナタは、ポルトガル生まれのお菓子。英語で言うなら、“custard cups” です。これを生み出したのは、ベーカーではなく、カソリックのお坊さんだそうで、意外ですね。
教会では、僧が着る真っ白の服を漂白するのに、卵白をよく使っていて、余った大量の卵黄を、もったいないのでお菓子作りに用いたようです。だから別名を、“Pastel de Bethlehem” と言うんです。
Salt Water Taffy
ソルト・ウォーター・タフィーは百年以上の歴史があります。オーシャンシティーのボードウォークで、1898年に生まれました。70種類以上のフレーバーがありますが、チョコレート味の人気が高いようです。
砂糖、バター又は油、コーンシロップ、コーンスターチ、塩などを混ぜて茹で、中に空気を含ませることで、あのフワフワ、ネチネチした感触のキャンディーが出来上がります。歯にくっ付きやすいので、私は苦手ですが。
Zeppoles
イタリアのナポリで生まれたゼッポレは、ニュージャージー州のボードウォークでも人気の食べ物です。
ドーナツ生地をクルーラーのように絞り出して揚げ、砂糖をまぶして食べます。上にカスタードクリームや生クリームを載せているものもよくあります。
飲み物
Boost
サウス・ジャージーのユニークなソーダ・ドリンクのことです。「ブースト」っていう名前を聞くと、いかにも勢いがありそうな気がしますが、実はこれ、フラット・コーラとも言われていて、つまり気の抜けたようなソーダなんですね。
炭酸苦手だけど、コーラっぽいのが欲しいという人のために、1912年にリバーサイドの薬剤師が、カフェインと柑橘味を調合して、ソーダ・ファウンテン用に開発したんです。マウンテンデューの真逆を行くソーダって、どんな味なんでしょう?
Boylan’s soda
また薬剤師の登場です。1891年に、ニュージャージー州のパターソンに住むウィリアム・ボイランという人が、白樺の木を利用して作ったルートビールが始まり。
最初は樽から注いでいたのが、そのうちレトロなラベルの瓶詰になり、今では本社をニューヨーク市に置いています。
Yoo-hoo
アメリカのスーパーに行けばどこにでもある、人気のチョコレートドリンクは、ニュージャージー州生まれ。最初は、“Tru-Fruit” というビジネス名でドリンクを作っていた起業家が、何とか長持ちするチョコレートドリンクを作れないものかと試行錯誤の上、完成。
でも、今一インパクトのある名前がないということで、当時野球の黄金時代であったことから、知らない人はない、ヨギ・ベラと提携してスポークスマンになってもらい、売り出すことにしたのです。その狙いは大成功!
時を経て、広告媒体は変わり、今では、“Dr.Pepper-Snapple Group” の傘下に入り、本社もニューヨークになりましたが、ユーフーのノスタルジックな味わいは変わりません。
ニュージャージー州生まれの有名ブランド
Campbell’s
キャンベルスープを知らない人はまずないと思います。ニュージャージー州のカムデンに本社を置くキャンベルは、スープ製品が最も有名ですが、買収を繰り返して大きくなっていく内に、加工品やスナック系の食べ物も増えています。
吸収合併した会社には、例えば、V8 や Swansen に Pepperridge Farm といった大手の会社があり、V8 を傘下に置いた時のキャンペーンには、元合衆国大統領のロナルド・レーガン氏が、俳優時代にスポークスマンを務めたそうです。
Goya Foods
ニュージャージー市にあるゴヤ・フーズは、1933年にスぺイン系移民の手によって創設されました。ゴヤの製品は、プエルトリコやカリブ海、メキシコやキューバなどの中央から南アメリカに広がるヒスパニックの食べ物を扱っています。
食材類も豊富ですが、中でも私が気に入っているのは、“Sazon Goya” というシーズニングパウダーです。これがあると、チリやスープにもう一味ほしいなと思うときに役に立つのです。
M&M’s
アメリカを代表する、エム&エムのチョコレートキャンディーもニュージャージー州で、太平洋戦争が始まった頃に生産されました。というのも、そもそも兵隊さん向けだったんですね。
チョコレートは非常食として持っておくと、山中で遭難にあった時でも命の維持に役立つことは有名です。でもそのままだと、夏にはポケットの中で溶けてしまいます。そこで、硬い膜でコーティングすることを考えました。
それなら相当長い間持ちこたえることができます。だから、第二次世界大戦時の最大の顧客はアメリカ陸軍だったのです。当時は、「手の中では溶けないけど、口の中ではとろける。」というのがキャッチフレーズでした。
こうしてみると、ニュージャージー州の食べ物は、バラエティー豊かなファーストフードを始め、アメリカや世界の皆が知っているものも含め、庶民の食べ物が多いような気がします。
新鮮な野菜類や、ローカルでしか食べられないサンドイッチやホットドッグなどは、現地のドライブインやダイナーに行って味見するしかないですね。ハブに近い所にあるので、また機会があったら寄ってみてくださいね♪