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イリノイ州の食べ物には、ダイバーシティーが見られます。シカゴの空港がアメリカのハブ空港になっているように、移民のルーツも様々で、ポーリッシュ、イタリアン、パキスタンにメキシカンからラテン系まで、幅広い食文化が融合しているのです。
はっきり言って、高級な料理で有名なものは、あまり耳に入ってきませんが、人気の食べ物はほとんどファーストフードで、その昔はカートで販売していたものや、安上がりでお腹が膨れるものが多いです。
ではイリノイ州で、地元住民の間で愛され続けている食べ物にはどんなものがあるのか、ソウルフードを中心に見ていきたいと思います。
イリノイ州で人気の食べ物
サンドイッチ
Jibarito (Plantain & Steak Sandwich)
サンドイッチというと、普通は具材がパンに挟まれいる物を想像しますよね。でもこのプエルトリコ由来のサンドイッチは、緑色のプランタン(バナナに似た果物)を揚げた物に、たたいて薄くしたステーキや野菜類を挟んで出てくるのです!
Cemita Atomica
アトミカは、メキシコの代表的なサンドイッチですが、現地 “Puebla” を出たことがなかったものを、シカゴに往復していたレストランオーナーが、故郷の味を懐かしんで再現したのが始まりです。
ゴマが入った自家製パンに、パン粉を付けて揚げたポークにマリネしたポークチョップやハムを挟み、アボカドとチポートレソースや、とろ~りとろけるメキシカンチーズに、季節によっては自家菜園で採れるハーブが入っています。
Horseshoe Sandwich
イリノイ州のスプリングフィールドにある “Leland Hotel” で生まれたホースシューは、オープンサンドイッチです。皿の盛り付けを見ても、すぐにサンドイッチとはわからない設定になっています。
ベースにあるのは、テキサストーストと呼ばれるスタイルの厚切りパンで、その上にハンバーガーが載って、チーズソースをかけて、最後に皿全体にこんもりとフライドポテトが散りばめてあります。
どうして「馬蹄」という名前が付いたのかというと、今では中に入れる肉はバーガーが主流なのですが、当初は馬蹄型に切ったハムを使っていたそうです。最近では、チキンを使うバージョンもあります。
Italian Beef Sandwich
シカゴで人気のサンドイッチの1つで、身の詰まったイタリアンロールに、薄く切ってある味の付いたローストビーフを何枚も重ね、スパイシーなレリッシュをたっぷり入れて、肉を調理した汁に浸けて食べます。
フレンチディップを想像していただけるとわかりやすいかと思いますが、シカゴスタイルのイタリアンビーフ・サンドイッチは、汁に漬けながら食べるというよりは、片端、又は両端とも、ひたひたにして食べるのが特徴です。
Mother-in-law Sandwich
シカゴのサウスサイドで人気のサンドイッチです。ホットドッグのパンに、メキシコのタマレにチリコンカンを載せて、玉ねぎやトマトに胡瓜を一緒に挟んだものです。
名前の起源は不確かなのですが、シカゴの人は冗談で、「このサンドイッチを食べたら、(義理母のように)胸焼けするかもよ。」と言うそうです。
ついでに言うと、あるレストランでは、このタイプのサンドイッチにとろけるチーズを加えたものを、“Father-in-law” と呼んでいるそうですが、その根拠は???
ピザ
Chicago Thin Crust Pizza
シカゴスタイルのピザ生地は、クラッカーほどの薄さでクリスピーです。ハーブたっぷりのトマトソースにたくさんのモッツァレラチーズがかかっていて、その特徴は、普通のピザのように三角状に切り分けるのではなく、四角に切るところです。
このスタイルは通常、“tavern-style” とか、“party cut” と呼ばれています。ディープディッシュ・ピザが一番有名ではありますが、地元の人には、この薄型クラストピザの方が売れ行きが良いのです。
Deep Dish Pizza
ディープディッシュ・ピザは、シカゴを代表するピザスタイルですね。ピザ生地は薄めから中くらいの厚みで、周りの壁が高くなっているのが特徴です。ですので、普通のピザパンではなく、鉄のフライパンとかパイ皿で焼くことになります。
生地にはコーンミールが加えられるので、仕上がりは黄色っぽいです。トッピングというかフィリングがたくさん入るので、焼く時間が長くなるため、通常のピザとは逆の順序で生地に載せていきます。
つまり、普通はトップに来るチーズをまず先に散らしてから、ペパロニとかソーセージなどの肉類、またベジタリアンであれば野菜類を置き、仕上げにトマトソースをかけて焼き上げます。ナイフとフォークを使って食べるピザです。
Stuffed Pizza
スタッフドピザは、シカゴの有名なディープディッシュ・ピザを発展させたもので、見た目にはそっくりですが、こちらの方がもっと背丈があり、生地にはやや甘味があります。
ディープディッシュのように周りの生地を高くした中に詰め物をした後、上から更に生地を被せ、空気穴を開けます。パイを作るときのような感じですね。最後にトマトソースを全体にかけるので、切り分けるまで中身が分かりません。
ホットドッグ
Chicago Style Hot Dog
世界恐慌の時代に、シカゴではホットドッグを売るスタンドが無数にできました。当時は1個5セントで売られていたそうです。大抵蒸して温めるのですが、チャコールを使ってグリルしているものは、“Char Dogs” と呼んでいます。
中身は実に盛りだくさんで、ポピーシード入りのパンに、牛肉オンリーのフランクフルトソーセージの他、トマトに玉ねぎ、ディルピクルスに、色鮮やかなスイートピクルス、スポーツペッパーにマスタードが入っています。
ちなみに、シカゴスタイルのホットドッグにケチャップを使うのは邪道とされているので、ご注意を!!
The Cozy Dog
コージードッグというのは、イリノイ州スプリングフィールドにあるドライブインレストランの名前です。で、ここでは、ホットドッグではなくコーンドッグの話になります。
コーンドッグというと、ホットドッグをコーンミールの生地で包んで揚げた物ですが、オリジナルは、“Crusty Curs” と呼ばれて、テキサスにあるアメリカ空軍基地で売られていました。
でもどうして、コージードッグドライブインが有名になったかというと、1946年のイリノイ州フェアで、このコーンドッグを串に刺して出したのが初めてだということです。人間何でも視点を変えることは大切ですね♪
Maxwell Street Polish Sausage
シカゴのマックスウェル通りにあるマーケット地区で、1943年に、マケドニアの移民であるジミーが開いたホットドッグブースがありました。ここで出す、大きくて太くてガーリックの味が濃い、キルバーサスタイルのソーセージが人気を博しました。
これによく炒めた玉ねぎとマスタードを付けてパンに挟んだホットドッグは、瞬く間にヒットし、後に各地に広がりましたが、今でも、“Jim’s Original” として、本家本元のスタイルが根強い人気を誇っています。
肉類
Mills’ Baby Back Ribs
ベビーバックリブは、別にイリノイ州でなくても、どこにでもありそうな食べ物なのですが、豚の世界のスーパーボウルと言われる、バーベキュー調理世界選手権がメンフィスで5月にあって、マイク・ミルズとそのチームは何度も優勝しているのです。
つまり、Mike Mills という人は、バーベキュー界の Tom Brady なわけです。今では、ラスベガスやニューヨークにも彼のレストランがありますが、彼のオリジナルのレストランは、イリノイ州の “Murphysboro” という所で始まりました。
そこで出される優勝作品のベビーバックリブは、りんごやチェリーのチップスで6時間かけてじっくりスモークされた、伝説のリブなのです!
Chicken Boti
シカゴにはパキスタン料理店も数多く存在します。ボティというのは、パキスタンでは鶏のもも肉やドラムスティックを指すらしく、よく焼き色を付けて、スパイシーなグリーンチレペッパーで風味付けしている食べ物です。
Chicken Vesuvio
ベスビオというのは、ナポリにある火山、“Vesuvious” から付けられた名前で、1930年代からシカゴにあるイタリアン・アメリカンのレストランのメニューに登場しました。
骨付き皮付きのチキンと、くし形に切ったポテトと一緒に人参、セロリ、にんにくなども併せて、たっぷりのオレガノとレモンジュースに白ワインのソースで味付けて調理します。
スナック
Garrett Mix
シカゴの有名な、“Garrett Popcorn Shops” が出している、キャラメル味とチーズコーン味のポップコーンミックスのことで、商標登録されています。日本でも買えるみたいですね。顧客の要望から生まれたというから、やはり皆がほしがっていたミックスなんですね。
デザート
The Rainbow Cone
イリノイ州の名物、レインボー・コーンが生まれた背景には、ちょっとした物語があります。その昔、ジョセフ・サップという少年がいました。彼は孤児だったので、極貧でした。でも子どもだからアイスクリームがほしかったんですね。
それで、ペニー硬貨(日本の一円玉とほぼ同じ価値)をコツコツ貯めました。やっとたまったけれど、アイスクリームが買えるのは1つだけ。でも彼はバニラ味もチョコレート味も欲しかったのです。
そんな彼が大きくなって車のメカニックになりました。子どもの頃の思いを忘れることのなかった彼は、奥さんと一緒に、シカゴの町の一角でアイスクリーム・スタンドを始めることにしました。彼の小さい頃にかなわなかった夢を託して。
そこで1926年に生まれたのが、数種類のフレーバーを一度に楽しめる、“The Rainbow Cone” だったのです。オリジナルフレーバーの組合せは5種類で、苺、チョコレート、パーマーハウス(チェリーと胡桃の入ったバニラ)、ピスタチオにオレンジシャーベットでした。
4年後に訪れた大恐慌にもめげず生き延びて、後に息子のロバートさんが後を引き継ぎ、1986年には孫娘のリンさんが後継者となり、“The Rainbow Cake” も新たに作って、家族はみんな昔からいる場所に住まわれているそうです。
Twinkie
アメリカのジャンクフードを代表するスナック菓子のトゥインキーを作っている会社は、イリノイ州の “River Forest” にあります。クリームフィリングの入った黄金色のケーキが、1袋に2個入って売っています。
1933年に1袋5セントで売り出した時には、バナナクリームを詰めていたのが、大戦でバナナの輸入が止まったため、以後バニラクリーム味になって、メインフレーバーとして定着したようです。
ジャンクフードの代表格として有名になったのは、1979年に起きた殺人事件でした。弁護側が、トゥインキーをたくさん食べていたから頭がおかしくなったというロジックを立てたのです。今でも冗談で、“The Twinkie Defense”という言葉が残っています。
その他
Pierogis
イリノイ州には百万人以上のポーランド出身の移民がいると言われています。ポーリッシュ・クッキングの中でも人気のダンプリングがピエロギで、スイートとセイボリーの両方があります。
セイボリータイプの具は、主にポテトやチーズ、挽肉やキャベツにマッシュルームなどが入っていて、上にフライドオニオンを載せて、サワークリームをつけて食べることが多いです。
Sport Peppers
シカゴのホットドッグやサンドイッチやピザといった食べ物には欠かせないのが、このスポーツペッパーです。細くて、長さは3~4cmくらいで、辛さは中くらい。スコビル指数は1万から2万3千ほどです。
成熟すると赤くなりますが、まだ緑のうちに刈り取ってビネガーに漬けたものが、瓶入りで売られています。
イリノイ州独特の飲み物?
“Italian Lemonade” と聞くと、普通は、レモンスカッシュのような飲み物を想像しますよね。 でも、シカゴのリトル・イタリーにある、“Mario’s” というレストランの「イタリアン・レモネード」は、実は、“Italian Ice” なのです。
細かくおろした氷の中には、人工的に着色したシロップではなく、新鮮なレモンの果肉とレモンピールが入って、本当にリフレッシュする夏の風物詩となっています。
イリノイ州ので人気の食べ物は、ほとんどシカゴのストリートフードでしたね。色々試したいものはありますが、私が一番心に響いたのは、「レインボー・コーン」です。
私が生まれた時はまだ白黒テレビの時代でしたが、贅沢はできなくても、幸いにも両親のおかげで、普通の食べ物を我慢するという記憶はありませんでした。子ども時代に経験することって、後の人生に大きな影響を与えることは間違いありません。
ジョセフさんが思いを込めて立案した、夢のアイスクリーム・コンボを、いつかその背景を思い浮かべながら、じっくり味わってみたいものです。
ちなみに、うちの主人のファーストネームは、(息子さんの方の)”Robert” で、ミドルネームは、”Joseph” です♪