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アメリカでの卵の選び方って、実は選択肢が多すぎて、困ってしまうんです。もちろん予算が限られていれば、各食料品店が最安値で出しているものを買えばいいのですが、できれば賢い選択をしたい時には、いろんな名称の基礎知識が必要です。
卵のサイズや色の違いといった基本的な事項以外に、アメリカ独自のグレードの見方や、最近よく問題になる鶏の飼育の仕方による表記の種類など、気になる事柄がいろいろ!
そこで、一体どういうことに注目して、好みに合った卵を探せばいいのか、アメリカの卵の選び方について解説していきます。また、せっかく良いものを選んでも、保存状態が悪いといけないので、最後に保存の注意点にも触れています。
アメリカでの卵の選び方
卵のサイズの種類
アメリカのスーパーで普通に売られているのは、「中」「大」「特大」「ジャンボ」といったサイズですが、すごく細かい分類にすると、小さめの卵のサイズがあと2つ加わり、以下のようになります。
・Peewee------42g以下
・Small------ 最低42g
・Medium----- 最低49g
・Large------最低56g
・Extra Large--- 最低64g
・Jumbo------70g以上
料理やベーキングに使うレシピには、卵のサイズを明記しているものとそうでないものとがあります。もし何も書いていなければ「大」を選んでおくと無難です。
大は小を兼ねると言いますが、「ラージ」があれば、2~3個以内の使用なら、「ミディアム」指定でも代用できるからです。
ついでに、標準的な「ラージ」サイズの卵の黄身は、大体「15mL」で、白身は大体「30mL」となっているので、部分的に使うときの基準にされるといいでしょう。
卵の色の区別
【殻の色】
アメリカに限らず、これまで卵を選ぶとき、白より茶色の殻の方が栄養がありそうな気がしてきたんですが、実際のところは差がないようです。では何が色の違いを生むのかというと、それはあくまで鶏の種類。
茶色の殻になる鶏は、“protoporphyrin”(プロトポルフィリン)という色素を有しているためで、何でも、チキンの耳たぶが白いものは白い殻、赤いのは茶色い殻になるんだとか。ホントかな? でも面白いですね♪
それにしても、大抵ブラウンエッグの方が値段が高いことが多いですよね。これは、茶色の殻を産む鶏の種類は相対的に大きく、したがって餌も多く必要とするので、経費がかかるという理由からです。
【黄身の色】
概して、卵の黄身は「黄色」と表現することが多いですが、淡い黄色もあれば、ほとんどオレンジ色に近いものまであります。どうしてこの差が出てくるのかというと、それは鶏が食べる餌によるのです。
その他大勢の鶏は、大抵コーンミールを食べています。だから薄い黄色になりますが、マリゴールドを食べさせたり、極端には、赤いペッパーを食べさせたりすると、黄身が濃い色になっていくわけです。
ここでも同じことが言えるのは、栄養価に大して違いはないということです。ただし、大量生産されている卵に比べ、個人の農家で生まれた卵の方がおいしいと感じるのは、やはり愛情をもって育てられているからではないでしょうか。
グレード別
アメリカで流通している食品基準は、USDA “United States Department of Agriculture”(米国農務省)が取り決めます。
卵の殻、つまり外側の状態では、主にシミや色素沈着、カルシウムの堆積などによって、「グレードAAまたはA」及び「グレードB」に分かれ、基準に達しないものは、「リジェクト」扱いになります。
スーパーに並んでいるものは、主に卵の中身、つまり白身と黄身の状態によって、以下のように品質を定めています。
・Grade AA---最優良卵のグレードで、白身がこんもりとして弾力があり、黄身との一体感があり、血痕の跡がなく、卵内の空洞が一番少ないもの。
・Grade A ---優良卵として、一般によく流通しているグレードで、その他の特性は、AAには劣るものの、食品としての品質は信頼ができるもの。
・Grade B ---白身はたらっとして水っぽく、黄身と離れそうで、血痕があったり、空洞も多く、通常、業務用に、液体や粉末の加工品に使用されるレベル。
・Inedible---食品には不適当ということです。昔は、Cグレードとして存在していたようですが、今は除外品になっています。
アメリカのお店で見るのは、グレードAA か A のみです。でもこのグレードだけでは、鶏がどういう環境で育てられているか知る由もないので、次に別の視点からの選び方を解説します。
鶏の飼育状態による違い
Battery Caged
悪い環境の鶏をわざわざ宣伝するわけはないので、この表現が卵ケースに表示されることはありません。もし何の記載もなければ、この可能性が高いとみていいでしょう。
アメリカのスーパーに出ている9割がたの卵は、狭い籠の中で、一羽につきコピー用紙くらいのスペースがあるかないかの状態で育てられている鶏から来ているそうです。
鶏の立場にたって、想像してみてください。隣と常に体がくっついていて、羽を広げることもできなければ、姿勢を変えて体を休めることもできない状況です。ストレスたまりますよね。
Cage Free
最近よく耳にするのが、この言葉。つまり上記のような籠の中の鶏ではなく、ある程度自由を与えられている環境なのですが、その自由の範囲は限られていて、納屋というか養鶏場の中だけで生活していることに変わりはありません。
ですから、納屋全体を大きい籠と考えると、決して鶏にとって望ましい環境とは言えないのです。
Free Range
次にもっと行動範囲が広がった場合です。この鶏たちは外に出してもらえます♪ USDAの基準では、生産過程にある鶏たちが、毎日一定時間、外気に触れ青空を仰ぎ、仲間の鶏たちとの社交的な時間も確保できることを前提にしています。
でも、外でも大きい柵のある所で飼われている場合が多く、完全に自由な環境ではありません。
Pasture Raised
最後に、鶏にとって一番人間らしい?環境で育てられているのが、この表現です。一年を通して日中はほぼ戸外で自由に歩き回って、牧草を食べたり、身づくろいをしたり、仲間と遊んだりできる鶏たちです。
この言葉と似たものに、“pasteurized” という単語があります。次のグループで説明していますが、ここで言う、「草原で育てられた」という意味の言葉とは違いますので、ご注意ください。
Certified Humane
政府機関のUSDAとは違って、非営利組織である、HFAC “Humane Farm Animal Care” という民間団体があって、鶏に限らず、家畜が衛生的で自然な環境の下で、心身ともに健康的に飼われているかの判断を下す組織があります。
そこの基準を満たす生育環境で生み出されたものには、この表示があります。
栄養・衛生状態の表示
All Natural
この表現はよく考えないといけません。FDA(アメリカ食品医薬品局)の定義によると、”natural” とは、「いかなる人工的または合成された添加物等を含まないもの」とあります。
確かに、卵そのものに後から何かを加えることをしなければ、この表現を使っていいのかもわかりませんが、そもそも、バタリーケージで育てられた鶏から生まれた卵が、すべて自然体とは言い難いものがあります。
Farm-fresh
大抵の業者は通常、卵が産み落とされてから72時間以内に店頭に運んでいるようですが、この表現は、USDAの監視下にあるわけではないので、直売以外には全面的に信用しない方がいいと思います。
Hormone-free
近頃よく騒がれている、ホルモン剤注入か否かの問題ですが、そもそもFDA “Food and Drug Administration” では、全ての鶏類の食品へのホルモン剤使用は禁止しているので、わざわざ書く必要もないのです。
No Antibiotics
抗生物質にしても、卵製品に使用されることはほぼないとみていいので、まあ再確認程度に認識しておくといいでしょう。
Omega3-enriched
亜麻仁やフィッシュオイルなどで、オメガ3脂肪酸を補強されたものです。オメガ3脂肪酸を補強されたものです。オメガ3は、網膜の機能維持にも重要な栄養素ですが、含有量の表示に特に規制はないので、実際にどのくらいの有効成分が含まれているかは疑問です。
Organic
オーガニックに関しては、USDAの基準があります。ケージフリーで育てられた卵で、鶏が食べる餌には、何ら人工的なものや除草剤がまかれたものを使用していないことが求められます。
Pasteurized
低温殺菌を意味しますが、アメリカのスーパーに出ているほとんどの卵は普通、ただよく洗っただけのもので、加熱殺菌して、サルモネラ菌などを除去しているものは少ないです。だからアメリカでは生卵は食べない方がよいと言います。
でも料理によって、例えば代表的なシーザーサラダのドレッシングには、生卵を使うことが前提なので、人によっては、ポーチしてから使うようにしたりします。
私は、家でたまにすき焼きをするときには、どうしたって生卵が欲しいので、危険度は無視して使っていますけどね。でも、そもそもすき焼きの基本的なスタイルに慣れていないアメリカ人の主人は、生卵を使いません。
Vegetarian-fed
鶏の餌は全てベジタリアンで賄っているということですね。でも鶏は基本、何でも食べるので、一番環境の良い牧草地で放し飼いの時には、虫もついばんでいるわけです。だから菜食主義の反動として最悪の場合、仲間を襲うこともあるそうです。
卵を保存するときのヒント
せっかく良い卵を選んでも、家に持ち帰った後の保存状態が悪ければ何にもなりませんよね。以下に簡潔に、より長く安全に卵を保存するためのヒントを挙げてみました。
冷蔵庫の場所
本来卵の殻には、バクテリアをはねつける保護膜が張られているので、農家から直接買い求めて、洗っていないものは、数週間室温で保存できるのですが、スーパーに出ている卵は一度洗ったものなので、冷蔵庫に入れて細菌から守る必要があります。
そこで適当な場所なのですが、冷蔵庫の扉は開け閉めする度に温度が変わるので、よくありません。又ドアの所に卵を置く穴が備わっている物もあるのですが、わざわざケースから出してしまうと、臭いやばい菌が移る可能性が高くなるので、お勧めできません。
卵のケース、または密閉容器に入れて、棚の奥の方に入れておくと長持ちします。ケースに書いている日にちは賞味期間なので、普通はそれ以上保存していても食べるのに問題はありませんが、ベーキング目的で泡立てが必要な場合は、新鮮な卵が望ましいです。
卵の向き
卵のグレード分けの解説で、殻の中には空洞があると言いましたね。これは、卵の丸みを帯びた方に入っているので、こちらを上に、つまりとがった方を下にしておくと、より新鮮さを保つことができます。
また、この置き方をすることで、卵の黄身ができるだけ真ん中に収まるようになります。
生卵とゆで卵では?
普通、生ものの方が足が早いのですが、卵の場合、ゆで卵の方が早く悪くなります。ですので、ゆでているからもう少し大丈夫と思っていると、冷蔵していても危ないので、気を付けてくださいね。
アメリカのスーパーで卵を選ぶ時のチェックポイント(まとめ)
・卵が割れていないか確かめる
日本だと透明のケースに入っているのがほとんどだと思いますが、逆にアメリカではリサイクル可能な不透明のケースに入っていることが多いので、外からではわかりません。店で開けて確かめてからレジに持っていきましょう。
・賞味期限をチェック
卵は記載されている期限日より長く持ちますが、期限切れの物はもちろんのこと、ほんの数日しか残ってないものは、その店の棚で相当長く置き去りにされていたと思われるので、避けた方が賢明です。
・USDAサインのある物を買う
・上記のサイズや色の違いを参考に、自身の目的に合ったものを選ぶ
・家庭の予算を考慮した上で、卵を産む鶏の飼育状況や、栄養・衛生状態にまつわる用語を頭に入れて、総合判断する
以上、アメリカでの卵の選び方について解説しました。いろんな言葉遣いが出てきましたね。似たような単語もあり、またそれぞれの表現がカバーしている範囲も曖昧なこともあるので、100%正解はありません。
あとは、ご自身の中で判断基準を作り、予算と相談しながら、家族の好みと使用目的に見合った卵を選ぶことですね。アメリカで健康志向のスーパーに行くと、実にたくさんの種類があるので、目移りしてしまいます。
目下、私が一番気に入っているのは、“Happy Egg” というブランドです。包装とネーミングに踊らされている感もありますが、黄身が色濃くぷっくりしているので、ハッピーな気分になるんです♪