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バルサミコ酢の種類は、大きいグループに分けると、2つになります。トラディナルとコンディメントです。
原材料や厳格な製造工程を基本に区別されるので、その見分け方を理解していると、スーパーに行ったときにも、予算に応じた賢い買い物ができますね。
イタリアで生まれ、世界に広がった純粋なバルサミコ酢の種類以外にも、バルサミコ酢もどきに属するものもあるので、その違いについても例を挙げて解説しています。
バルサミコ酢の種類は2つに大別
トラディショナル・バルサミコ “Traditional Balsamic Vinegar”
本家本元、正真正銘、生まれも育ちもイタリア産の生粋バルサミコ酢で、更に地域別に次の2種類に分かれます。
・Aceto Balsamico Tradizionale di Modena DOP
・Aceto Balsamico Tradizionale di Reggio Emilia DOP
名前の最初に付いている“Aceto”というのが、イタリア語で「酢」の意味で、終わりの方に付いているのが、イタリアの生産地を表しています。
では、最後に付いているDOPというのは何かと言うと、イタリア語では、“Denominazione di Origine Protetta”。
英語だと、“Protected Designation of Origin”。要するに、地域限定生産を認定し保護する仕組みですね。
このDOP認証をもらうためには、製造工程の最初から最後まで、すべて協会から派遣された検査官に監督され、承認されなければならないのです。
また原料になるブドウの種類も、例えば、“Lambrusco”や“Trebbiano”といった、特定の地域で栽培される登録済みの品種に限られています。
それらの限定品種の葡萄のしぼり汁である、モスト”mosto”に熱を加えて煮詰め、樽の中で発酵させていくのですが、DOPと呼べるためには、最低12年の熟成期間を必要とします。
その間、樫や栗、桜に桑、杉や胡桃などの木の樽を駆使して、モストを毎年次の樽に移し替えていき、熟成を重ねていくのです。だから、あの濃厚で複雑な風味が形成されるのですね。
また完成されたバルサミコ酢を入れる瓶も、協会指定の物と決まっていて、あの真ん中が少しふっくらした100mL入りに限定されており、ワックスで封印されています。
このワックスには、熟成期間によって色の識別があり、20~25年物は“oro”ゴールドキャップ、15~20年物は”argento”シルバーキャップ、12年物は”aragosta”レッドキャップとなっています。
ゴールドと言えば、その昔は、この伝統的な手法で作られた本物のバルサミコ酢は、金と交換ができたと聞きます。いや、すごい!年間数百本しか製造できないのも納得。
これらのワックスキャップの付いた本物は、ハイエンドのスーパーに行くと見かけることがありますが、場所によっては、アルコールのようにガラスケースに入れたり、鍵がかかっていることもあります。
コンディメント・バルサミコ “Condiment Balsamic Vinegar”
トラディショナルには手が届かないけれども、品質的にはほぼトラディショナルに近く、値段的には手が届きやすい種類です。
アメリカでは、高級キッチンストアで有名な “William-Sonoma” が、1977年よりバルサミコ酢を導入し始めました。
イタリアのバルサミコ酢は世界中で人気を博したため、もう少し手に入れやすくするために、EUが2009年に認証を始めたIGPというものがあります。
・Aceto Balsamico di Modena IGP
IGPとは、英語で、“Protected Geographical Indication”となり、モデナ産の “Albana” や “Fortana”といった葡萄のみを使って作られますが、その他の規制は緩やかなので、値段も様々です。
この銘柄と同等の種類に、“Consorzio di Balsamico Condimento”の押印がある物や、他にも様々な名前のものがありますが、価格帯の幅も広く、中身はピンキリです。
業者によっては、決して値段と品質が合致しない物もあるので、見分けるコツを書いておきますね。
それは成分表示を見て、ぶどうのしぼり汁(英語では、“grape must”)以外の成分が載っているかどうかということです。その他の混ぜ物がなければ、間違いなし!
コンディメント・バルサミコは、ワイン酢を混ぜたり、場合によっては色艶を増すためにキャラメルを加えたりすることもあるからです。成分リストにワイン酢が先頭に来ているのは、純粋なモストが少ない証拠です。
また、単に “Product of Italy”(イタリア産)とするのではなく、具体的なイタリアの地名や、古くからある製造元の名前が記載されている場合も、ほとんど良いものと思っていいでしょう。
イタリア原産の葡萄を使ったバルサミコ酢であっても、製造過程のどこかで何かが間違って、DOP認定できなかったり、熟成期間が足りなかったり、最終生産地がイタリア以外だったりする物がコンディメント類に属します。
バルサミコ酢に似た種類
純粋な製法に基づいていない物でも、普通に“balsamic vinegar”という呼び方はできるので、スーパーの棚に並んでいるものを比べるときには注意が必要です。
ひどい物では、ワイン酢や、場合によってはサイダービネガーを中心に、人工的に色を付けたり、甘味料や増粘剤を使って、バルサミコ酢に似せただけの種類もあります。
だって、”balsamic”の単語自体は、バルサムのように、「芳香性の」という意味ですからね。以下に、少し例を挙げていきます。
・white balsamic-----白ブドウをキャラメル化しないように時間をかけて煮詰めるだけで、熟成期間は必要なし。料理に色を加えることなく、バルサミック風味を付けたいときに便利。
・flaviored balsamic---ハーブやフルーツ、バニラなどのフレーバーを注入したバルサミック・ビネガー。サラダドレッシングやドリンクにアクセントを加えたいときによい。
・balsamic glaze-----安価なバルサミコ酢に濃度や粘度を加えることで、濃いシロップ状にし、調理の最後に食材にかけたり、フレンチ風に皿に垂らしたりして使う。
・saba vinegar------バルサミコ酢の元になった形とも言われている。その昔ローマ時代に、葡萄汁をゆっくり煮詰めて3分の1量くらいになったところで、瓶詰にされていた。今では熟成されることが多い。
料理に使う用途によって、本物のバルサミコ酢でなくても、十分目的にかなう種類であれば、それでよしってとこですね。何せ安いし。
バルサミコ酢の賞味期限と保存方法
バルサミコ酢は、基本的に無期限に使用できることになっています。
ただし、密閉容器に入った状態で、大体摂氏5度から30度未満くらいの室温で、陽の当たらない暗い所に保管しておく必要はあります。
長期間保存していると、沈殿物が見られることもありますが、一旦瓶詰めされたバルサミコ酢は、それ以上熟成が進むことはないので、気にしなくても大丈夫です。
まとめ
・イタリアの伝統にのっとって作られた本物のバルサミコ酢には、DOP認定が付いていて、モデナ産とレッジョ・エミリア産がある。
・世界で幅広く販売されている、コンディメント(調味料)級のバルサミコ酢には多種あり、IGP認証のモデナ産もあれば、海外生産もある。
・バルサミコ酢とは呼べない似通った種類も数多く存在するので、使用目的に合ったビネガーを選ぶとよい。
最後に、ビネガー全体の種類については、こちらの記事で詳しく解説していますので、参考になさってください。