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ニューヨーク州の食べ物を取り上げます。私はその昔、ニューヨーク市とニューヨーク州がほぼ同じものだという錯覚があり、アメリカ人の主人と結婚して、その姉がローチェスターに住んでいたことから、初めて地理感覚がつかめた次第です。
世界ナンバーワンの大都会ニューヨークがあるマンハッタン島は、ニューヨーク州のほんの一部で、州の大半はほぼ郊外。その凝縮された都会ニューヨークは人種のるつぼで、そこで提供される食べ物も千差万別。
エスニック料理もたくさんあれば、移民がもたらした料理から発展したフュージョンもあり、今ではルーツがわからなくなるほど世界に広まったものも。このページでは、そんなニューヨーク州で是非味わいたい食べ物を解説していきます。
ニューヨーク州の食べ物
メインディッシュ
Buffalo Wings
名前にあるように、バッファロー名物の鶏の手羽先。遡ること1964年の3月。“Anchor Bar” を経営していたテレサの息子さんが、夜遅くに大学の友だちを連れてお母さんのバーにやってきて、何かスナックを作ってくれと頼みました。
ちょうど余るほどあった鶏肉を揚げて、カイエンペッパーの効いた酢入りホットソースを絡めて出したのが始まり。以後アメリカ中に広まり、今ではバッファローというとスパイシーに味付けた物を指すようになりました。なおオリジナルレシピは極秘中の極秘!
Chicken Riggies
“riggies” というのは、“rigatoni” を省略して言ったものです。ニューヨーク州にはイタリア移民が多く住んでいるのでパスタ料理も盛ん。リガトーニ・フェスティバルも行われるほどです♪
チキン・リギーズは、“Utica Riggies” とも呼ばれるように、ユーティカの街で有名になったイタリアン・アメリカン料理で、チキンとパプリカをスパイシーなトマトクリームソースで和えてリガトーニパスタに絡めています。
Eggs Benedict
ブランチメニューで人気のエッグベネディクトは、イングリッシュマフィンにカナディアンベーコンとポーチドエッグを載せ、オランデーズソースをかけていただくものですが、誰が開発したのかという点では議論の余地があります。
ロウアー・マンハッタンのデルモニコスというレストランで作られたという説から、有名なウォルドーフホテルのパトロンが、二日酔いに良い食べ物はないかとシェフに頼んで作らせたという説に、また別のベネディクト氏によるレシピ説まで。
いずれにしても、ニューヨーク州で生まれた食べ物であることには間違いがないようです。私も家で作ってみました。
Garbage Plate
私の主人の姉夫婦が昔、ニューヨーク州のローチェスターに住んでいました。カナダの国境に近いので、ナイアガラの滝も遠くありません。でも当時、この「ゴミの皿」?のことは聞いていませんでした。
要は、お腹を空かせた大学生にレストランオーナーが、バーガーパテを2つ並べて、副菜も2つ付け、フライはマカロニか豆などから1品選ばせ、ケチャップとホットソースをかけて、食べる前に全てを混ぜこちゃにし、パンと一緒に食べるのだとか。
わざわざグチャグチャに混ぜることもないのにと思うのですが、ローチェスターの “Nick Tahou Hots” というレストランの看板メニューになっています。
General Tso’s Chicken
スパイシーに揚げた鶏料理、「ツォ将軍のチキン」は、北米の中華料理店では定番の食べ物になっています。名前にある将軍との関連は怪しいものの、湘南出身のシェフ、Peng Chang-kuei が1950年代に作り始めた料理です。
彼が1970年代の初め頃、ニューヨーク市のミッドタウンに開けたレストランで出した時には、アメリカ人のテイストに合うように、やや甘みを加えて作ったとか。ヘンリー・キッシンジャーの大好物だそうですよ。
Lobster Newberg (or Newburg)
上述の、“Delmonico’s” は、ニューヨーク市の金融街にある極めて影響力の大きいレストランで、、かつては、ジョージ・ワシントンやエイブラハム・リンカーンにテディ・ルーズベルトまで、マホガニーで覆われたダイニングで食事をしたそうです。
ある時、この店の常連で船乗りの Ben Wenberg という人が、ロブスターの新しい料理をオーナーに見せたところ、気に入られてしまい、シェフが改良を加えてレストランメニューに加えたら、人気爆発!
それが面白くないウェンバーグ氏はレストランにメニューを取り下げるように依頼。でも味をしめた客たちが黙っておらず、レストラン側は名前を変えてメニューに再編。未だに人気は衰えずといったところ。
Utica Greens
ニューヨーク州中央部の都市ユーティカには、その名のついた有名な野菜中心のイタリアン・アメリカン料理があります。エスカロールをメインに、他の緑野菜やホットペッパー、プロシュートなどを炒めてチキンストックで蒸し煮にし、チーズとパン粉をかけて焼いて仕上げます。
ファーストフード
Coal Oven Pizza
ニューヨーク市は、石炭の火で焼くピザの街として名を馳せています。リトルイタリー地区にもそんなピザ店がひしめき合っていますが、1905年以来、象徴的な店になっているのは、Lombardi のレストラン。
John’s と Patsy’ と Totonno’s の3店舗の中でも、最後のレストランは、アメリカ国内でもベスト5に入るピザレストランで、料理界のアカデミー賞である、ジェームズビアード賞を受賞しているのです。
毎日新しく作られるピザ生地は、冷蔵する暇もなく使い切り、なくなれば閉店するので、行くチャンスがあれば、早めに行った方がよさそうですね♪
Knishes
クニッシュは、ホットドッグと同様にニューヨーカーに愛されているストリートフードです。ユダヤ系移民の食べ物で、焼いたり揚げたりする生地の中には、キャベツ、玉ねぎ、ポテト、チーズ、ビーンズなど、様々なフィリングが仕込まれています。
形も特にこだわることなく、一口サイズのものからロールパン大のものまで。ロウアー・イーストサイドにある “Yonah Schimmel” は、1910年以来、オリジナル・クニッシュを出し続けています。ちなみにクニッシュとは、イディッシュ語で「ダンプリング」の意味。
Spiedie’s
ニューヨーク州には他にもイタリア移民がもたらした食べ物があります。南部のブルーム群にあるビンガムトンという街で生まれたのが、このスピーディー。イタリア語で「焼き串」の意味です。
マリネした肉を角切りにして串焼きにしたものをイタリアパンに挟んで出します。オリジナルはラム肉を使っていましたが、今では牛肉でも豚肉でもありで、最近の一番人気はチキンになっています。
Street Meat
ニューヨーク市のストリートにはフードトラックやフードカートが点在しています。特に1990年代から顕著になったのは、黄色いシャツがトレードマークのハラール・カート。
エジプト移民が始めたとされるカートでは、スパイスの効いたチキンやラムにビーフを仕込んだジャイロや、ポークのスブラキなどのギリシャ料理のストリートミートが豊富。
White Hots
ニューヨーク州の中央から西部にかけての地域では、ローチェスター生まれのホワイト・ホットドッグがレギュラーより人気を誇っています。普通のと違うのは、燻製もせず、塩漬けにもせず、自然体のままなので、白っぽいということ。
ローチェスターには、ホットドッグの元祖でもあるドイツ移民のコミュニティーがあるのですが、最もよく知られているホワイトホットは、1956年にオープンした、Schaller’s Drive-In にある “Zweigle’s”。今でもそのスタイルは変わっていません。
パン系
Bagel with Lox
ニューヨーク市にべーグルをもたらしたのは、20世紀初頭にポーランドから来たユダヤ移民。このドーナツ型のパンは、最初にゆでてから焼き上げるので、あのモチモチして噛み応えのある食感を味わえるのです。
ロックスはスカンジナビアの食べ物ですが、後にニューヨーカーは、べーグルにクリームチーズを塗ってロックスを置いて食べるという独特のスタイルを編み出しました。
Beef on Weck
バッファローの食の名物の1つがこれ。“kummelweck” もしくは “kimmelweck”という、カイザーロールにキャラウェイシードとプレッツェル・ソルトをまぶしたロールパンに、牛肉をオ・ジュー “Au Jus” に漬けて挟み、ホースラディッシュをのばしたもの。
Pastrami on Rye
ニューヨーク州にも大量に移民が押し寄せていた1800年代の終わりごろ、ユダヤ系のデリカテッセンで出された、ライ麦パンにビーフパストラミを挟んで、スパイシーなブラウンマスタードを塗ったサンドイッチは、NYCの伝統メニューになりました。
オリジナル・パストラミはルーマニアのユダヤ人のレシピによってもたらされたようですが、数あるコーシャー・デリの中でも、1888年に開いた “Katz’s Deli” は、もっとも古くから存在し、ニューヨーカーのみならず、旅行者にも愛されています。
サラダ・スープ類
Manhattan Clam Chowder
クラムチャウダーとだけ言うと、普通はクリーム系のニューイングランド・クラムチャウダーを指すことが多いのですが、こちらはトマトベースのクラムチャウダー。1800年代半ばに登場して人気になりました。
前者に入る主な野菜はポテトと玉ねぎですが、後者のチャウダーには、人参やセロリなど、少し野菜の種類が増えます。元々はクリアスープから発して、後にトマトを加えることで今の形になったと言われています。
Thousand Island Dressing
サウザンドアイランドドレッシングはアメリカのみならず、日本でも人気のドレッシングの1つですね。オリジナルがどこで生まれたのかについては諸説あるので、ここでは追求しませんが、ニューヨーク州のカナダ国境辺りに、サウザンドアイランド地域があります。
文字通り、千以上の島々がある地域です。一応名前はここからきているわけです。マヨネーズをベースに、オリーブオイル、ウスターソース、レモンジュース、マスタード、ビネガー、パプリカ、ケチャップやチリソースが加わって、あの色になりました。
他にも細かい材料を挙げると、ピクルス、オリーブ、オニオン、パプリカ、ピメント、パセリ、ゆで卵などが加わることもあり、島々の数には負けるものの、数多くの素材が合わさってできていることがわかります。
Waldorf Salad
ニューヨーク市にある有名なウォルドーフ・アストリアホテルのシェフ、Oscar Tschirky は数々の人気メニューを生み出しましたが、ウォルドーフサラダもその1つ。私も何度も作っています。
オリジナルレシピでは、林檎とセロリをマヨネーズで和えてレタスの上に載せるシンプルなものでしたが、後に葡萄や胡桃が加わり、最近ではドライフルーツやチキンまで混ぜたりするバリエーションも増えました。
デザート類
Black & White Cookies
タキシードを思わせるような、黒と白のアイシングで半分ずつ覆われたクッキー。ニューヨーク市では暗黙の指定クッキーとなっています。アメリカの超有名なシットコムで、“Seinfeld” というのがありましたが、そのTV番組にも登場しました。
名前はクッキーとなっていますが、実はほぼケーキ。チョコレート味のエボニーカラーとバニラ味のアイボリーカラーは、まるで漆のような光沢を放っています。やはりユダヤ移民の影響を受けた食べ物の1つです。
Boston Shake
シェイクとなっているものの、これはサンデーとミルクシェイクが融合したハイブリッドなデザートなのです。ニューヨーク州のトロイに、“The Snowman” という、1950年代から続いている老舗のアイスクリーム屋さんがあります。
そうです。マサチューセッツ州ボストンの話をしているのではなく、ニューヨーク州で人気の食べ物の話です。どうしてボストンという名前が付いているのかも、この店のものがオリジナルなのかも一切不明? ちなみに、“Tastee-Freez” というチェーン店が初出という説も。
ここのボストンシェイクは、好みのミルクシェイクの上にホームメイドのアイスクリームを浮かべて、リッチなホットファッジソースをかけ、更に泡立てた生クリームを絞り出して、チェリーを飾るという組み立てになっています。一体何カロリーあるのでしょうね?
Cronut
ニューヨークのソーホー地区にあるフレンチベーカリー、“Dominique Ansel’s” で2013年10月に売り出されたのがハイブリッドのクロナット。ある時誰かが、この店にはドーナツがないね、とぼやいたことから始まりました。
店主は早速、アメリカのドーナツとフランスのクロワッサンを融合させるという画期的なアイデアを思いつき、開発に取りかかります。試行錯誤の上、完成品を発売すると、雑誌にも取り上げられ、たちまち店の前には長蛇の列!
素早いライバルベーカーも負けじと、疑似商品を作るものだから、オーナーはコピーライトを取得する羽目になるほどでした。店では、毎月新しいフレーバーを出して、今も顧客を惹きつけています♪
Grape Pie
ブドウパイはあちこちで作られていますが、コンコルドグレープを使ったパイは、ニューヨーク州にあるネイプルズの街の名物になっています。フィンガー湖の地域を「世界の葡萄のキャピタル」と呼ぶ人もいるくらいです。
毎年9月にはぶどうフェスティバルが行われるのですが、この時だけでも2万個のパイが売れるそうです! 誰が作り始めたのかという点においては諸説あります。
ただ共通しているのは、ブドウのフィリングはとてもジューシーなので、パイ生地とは別々に用意するという点です。モニカのパイでおなじみのグレープパイで、最後の仕上げに被せる円形のトッピング生地がかわいい♪
New York Cheesecake
チーズケーキというと、元をただせば古代ギリシャローマ時代までさかのぼることになりますが、少なくとも現在に近いスタイルになったのは、18世紀のヨーロッパ。そこから突破口を開いたのがニューヨーク州なのですね。
1872年に、チェスターのウィリアム・ロレンスという人が、アメリカン・クリームチーズを生み出しことが始まりでした。それが20世紀に入って、グラハムクラッカーでクラストベースを作り、クリームチーズと卵と砂糖を混ぜて焼いたシンプルな形が定番となりました。
Spumoni
スプモーニはネイプルズ生まれのアイスクリーム菓子。(ちなみに、スプモーネ“spumone”が基本形。)イタリア移民の多いニューヨーク州で発達したのも納得。ジェラートのような食感のアイスクリームの間にシロップ漬けのフルーツやナッツがたくさん仕込まれています。
アイスクリームは三色の層になっていて、これがナポリタン・アイスクリームの原型だと言われる由縁です。フレーバーはチョコレート・ピスタチオ・チェリーの組み合わせが一番多いですが、バニラやストロベリーに置き換わることもあり。
ニューヨーク州の飲み物
アルコールドリンク
Manhattan Cocktail
19世紀後半に、ニューヨーク市にあるマンハッタンクラブで最初に提供されたことから、この名前が付いています。ウィスキーベースでは代表格のカクテルですね。
ライ・ウィスキーと甘口のベルモットに、少量のビターズを加えたもので、グラスに注いでマラスキーノ・チェリーを飾るのが一般的です。アメリカの禁酒時代には、カナダのウィスキーを代用していました。
Brooklyn Cocktail
マンハッタンの兄弟分というか、ブルックリン地区の名前を冠したカクテルは、甘口ベルモットの代わりに、辛口ベルモットとマラスキーの・リキュールを使って作ります。
ノンアルコールドリンク
Coffee Regular
ニューヨーク市でコーヒーを注文するときの基本です。何も入れたくなければ、ブラックかライトかエキストラライトのいずれかを選びます。甘くしたければ、ブラック&スイート。
そしてクリームと砂糖を入れたければ、どういうわけか、レギュラー・コーヒーになるのです?? この法則は他の都市では通じませんので、要注意!
でも私はスタバが席巻してからNYCに戻ってないので、今も頑なにこの規則が当てはまるのかどうかはわかりません。
Egg Cream
看板に偽りあり! エッグクリームとは名ばかりで、実はこのドリンクには卵もクリームも入ってないのです。名前の出処は不確かですが、東欧から来たイディッシュを話すユダヤ系移民が、1900年代の初めに作り出した飲み物です。
どんな飲み物かというと、ミルクと炭酸水とチョコレートシロップをよくかき混ぜると、上に泡ができて、ちょっと見たところ、アイスクリームソーダのように見えるので、人気になりました。
やっぱり、アメリカの中でも特にニューヨーク州は人種のるつぼと言われるだけあって、移民が開発した食べ物や飲み物が多いですね。
自国の食文化を継承したものもあれば、異国の地に融合した新しい食のスタイルを発見したものもあります。
私は20年前くらいのニューヨークしか知らないので、もう一度訪ねて、あらためて今も受け継がれているストリートフードなんかを楽しんでみたい気がします♪