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カンザス州の食べ物を語る前に、まず地図で見るとよくわかるのですが、カンザスは、“Heart of America” とも呼ばれるように、アメリカ合衆国のど真ん中に位置しています。
つまり、周りは全て陸地。しかも山のない平地。カンザス州の州歌 “home on the Range”(峠の我が家)にもあるように、広く続く平坦な土地を利用した農業や牧畜業が盛んなのです。
となると、食べ物で期待できるのは、牛や豚に鶏といった肉類が中心になり、また麦やその加工品などが、州の特産になってきます。
家畜の数が人間の数の倍はあるというカンザス州では、どんな食べ物が人々に親しまれているのか、探っていきます。
カンザス州で人気の食べ物
肉料理
カンザス州の食べ物は、バーベキュー抜きでは語れません。ここの料理に移る前に、バーベキュー用語というか、レストランのシェフに当たる言葉があるので、簡単に説明しておきます。
バーベキューを焼くかまどのことを、英語で “pit” と言います。アメリカでは個人宅の裏庭でよくバーベキューパーティーをしますが、この時ばかりは、男性(大抵その家の主人)が取り仕切ることが多いです。
BBQに使う肉の選定から、下味、燻製、ソースを付けて焼き上げるまでを全て取り仕切るので、その人のことを、“Pit Master”(ピット・マスター)と呼びます。
Barbecue Hot Wings
カンザス州のバーベキュー熱はビーフやポークだけにはとどまりません。カンザスシティにある、“Woodyard Bar-B-Que” では、ピットマスターが欲しがる極上のスモークフレーバーを提供していました。
オーナーはそのうち、自らもレストランを開けるようになり、大きなかまどでは、牛肉や豚肉以外に、特大のチキンウィングも特製のスパイスで味付けした後、ホットソースでマリネしてバーベキューしています。
Barbecue Ribs
カンザス州のキャピタル、トピカのダウンタウンにある人気のバーベキュー店では、ピットマスターが特製のスパイスをすり込んだベイビーバックリブを燻製にしてから、ハウスソースをたっぷり塗って、肉が自然にばらけるほど軟らかくなるまで焼き上げます。
Chicken Fried Steak
名前には「チキン」とありますが、実は、ビーフステーキなのです。“country-fried steak” とも呼ばれますが、具体的には、”tenderized cube steak” の意味です。
つまり、ビーフキューブに味付けした小麦粉をまぶして、揚げたり焼いたりしたものです。普通は、揚げて作ったものをチキンフライドステーキと呼び、フライパンで焼いたものを、カントリーフライドステーキと呼んで区別しています。
上にかけるソースも、前者には白いクリームソース、後者にはブラウンソースをかけることが多いです。いずれにしても、南部料理によく出てくる食べ物です。
Pork Meatballs
カンザス州の豚肉は非常に美味しいらしく、ローレンスのダウンタウンにあるレストランでは、豚挽肉を使ってミートボールを作り、マリナラソースを絡めてパルメザンチーズをかけた料理が人気です。
Pot Roast
カンザスシティ出身のオニールが2000年に開いた、Leawood にあるアイリッシュパブレストランの、“O’Neill’s Restaurant and Bar” が出すポットロースト料理は格別だと聞きます。
カンザス州で育った良質の豚肉を、マッシュルームとともに、手で引き裂けるほど軟らかくなるまで調理してマッシュポテトの上に載せ、ワインソースをかけて、周りにはセロリと人参のソテーをあしらった一品は、美味しくてお腹一杯になるとか。
Steak
カンザス州ウィチタにある、“Scotch & Sirloin” では、1968年にオープンして以来、最低30日間は寝かせて軟らかくした、“Sterling Silver Certified” beef のみを使って、レストランで切り分けた肉を、ジューシーに焼き上げて出しています。
サンドイッチ・バーガー類
Bierocks
ロシアで生まれたポケットサンドイッチです。ピロシキに似ていて、イースト生地で作ったパンの中に、味付けして調理した挽肉や、キャベツの千切りや玉ねぎなどを仕込んで、こんがりベイクしたものです。ドイツ人のコミュニティーで広がりました。
BLT
よくご存知の食べ物、ベーコン、レタス、トマトが入ったサンドイッチですね。どうしてカンザス州のものが美味しいのかというと、やはり、カンザスで育った希少価値の赤豚を、アップルウッドで燻製にしてカリッと焼き上げたベーコンを使っているからです。
Hamburger
ハンバーガーそのものは何も珍しくありませんが、カンザス州のウィチタで、1921年に現れた、“White Castle” レストランで出した、四角く切った小ぶりのバーガーが、“sliders” と呼ばれ、人気を博しました。
レストランは後にチェーンとなり、13州で展開しています。売り始めた当初から、世界大戦が終わるころまでは、その小さなスライダーは、1つ10セントで売られていたそうです。
2014年のタイム誌には、最も影響を与えたハンバーガーとして掲載されました。
Loose meat sandwich
これは、アイオワ州の食べ物を解説しているページで、“Maid-Rite Sandwich” として詳しく載せているので、合わせてご覧ください。一言で表すと、”Sloppy Joe” の汁気を少なくしたようなサンドイッチ・バーガーです。
The Z-Man sandwich
カンザスシティにある、“Joe’s Kansas City BBQ” のオーナーシェフが、新しく作ったサンドイッチの名前をどうしたものかと思っていました。
そんな折、地元で人気のラジオのスポーツ番組のホストである Mike Zarrick が、番組で紹介してくれたことをきっかけに、彼の通称である、“Z-Man” という名前を付けたところ、ヒット商品になったのだそうです。
中身はと言えば、カイザーロールに、軟らかい燻製のブリスケットと、やはりスモークして溶かしたプロボロンチーズと、カリッと揚げたオニオンリングを挟んで、BBQソースをかけたサンドイッチです。
メキシカン
Chili & Cinnamon rolls
チリコンカンは、もちろんそれだけでも食べていますが、パン類を添えて出すときの主流は、コーンブレッドです。ところがアメリカの南西部に行くと、サイドに付くのがシナモンブレッドに代わるんですね。
普通の感覚では、いやそれはおやつの部類でしょう、と思ってしまうのですが、アメリカのミッドウェスタンの寒い冬を過ごすには、こういう組み合わせがコンフォートフードになるのですね。
そもそも、その昔、スクールランチに出されたのが始まりというから、そりゃあ子どもたちに受けること間違いなしです! 以後このコンボは、教会のファンドレイジングでも広まったようです。
Monster Burrito
カンザス州にはメキシコからの移民も数多くいます。州都トピカにある “Lupita’s” では、米と豆、好みの肉類にレタスやトマトも加え、サワークリームやチーズソースをかけてトルティアで巻いた、長さ25cmもあるジャンボ・ブリトーを出しています。
モンスター・ブリトーを提供しているメキシカン・レストランは多数あって、ローレンスにある、“Burrito King” で、重さ約5ポンド(2.25kgくらい)のブリトーを所定時間以内に完食する、チャレンジビデオがあるので、よかったら観てみてください。
キティちゃんのTシャツを着たうら若き女性は、手づかみの豪快な食べっぷりで、何と3分16秒で平らげました。隣の男性は丁寧な食べ方で、最後はフォークを使って6分5秒で完食。いやはや、ウーマンパワー炸裂のビデオでした。
乳製品
Brown Bread Frozen Custard
1884年にできた、“Baughman Bros. Ice Cream Company” の、看板商品です。当時は馬車にひかれたワゴンで販売していたそうです。1994年の火災で社屋と馬舎を焼失しましたが、コミュニティーに支えられて、ビジネスは継続しました。
ブラウンシュガーとバニラフレーバーのアイスクリームに、ブラウンブレッドをキャラメル化した粒を散りばめてあるアイスクリームは、今日では、”G’s Frozen Custard & Yogourt” が引き継いで販売しています。
粉物
Bread
カンザス州は別名、“Wheat State” とも呼ばれるくらい、小麦の生産量が多く、合衆国最多の製粉所を抱えています。よって、パン作りも盛んです。
もし、カンザス州で1年間に収穫した小麦をすべて使ってパンを作るとしたら、何と360億斤のパンができるということで、それは、全世界の2週間分の食料になるというから驚きです!
Doughnuts
カンザス州はアメリカのど真ん中に位置しているために、州を横切って、ハイウェイが縦横無尽に走っています。したがって、ドライブインがとても多いのです。
そういう所でちょっと一息、コーヒータイムに欠かせないのがドーナツですね。有名チェーン店から、ファミリーショップに至るまで、ドーナツを見つけるのに苦労しません。
Grebble
カンザス州には、“German Capital of Kansas” と呼ばれる地域があって、当然ながら、ドイツ移民が多く住んでいます。彼らがアメリカに来る前は、ロシアにいたそうなのですが、合衆国に魅力を感じて移り住みました。
彼らが故郷を懐かしんで作る食べ物の1つに、このグレブルがあります。軟らかいパン生地を作って小さい長方形にのばした後、2か所に切り目を入れて、両端をねじって挟み込み、油で揚げたパンです。整形の仕方は、ねじりこんにゃくに似ていますね。
カンザス州の飲み物
Beer
カンザス州は、「麦の州」と呼ばれるほど、麦の生産量が多いんでしたね。ということは、麦から作れるのはパンだけではなく、ビールもあります♪ カンザスの大平原を指して、“amber waves of grain” という言葉もあるくらいです。
ローレンスのダウンタウンにある、“Free State Brewing Company” では、ライトタッチの “Wheat State Golden” や、ホップの効いた “Cooperhead Pale Ale” や、シルキーな味わいの “Oatmeal Sout” といった銘柄が人気です。
カンザス州の食べ物は、どんなものが主流なのか、大体イメージしていただけたでしょうか?
合言葉は、「肉と麦!」ですね。
モンスターブリトーに挑戦する気は毛頭ありませんが、麦の名所で作られたパンや、ブラウンブレッド・フローズンカスタードは、機会があったらぜひ食べてみたいです♪