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アメリカの蟹にはどんな種類があるのかご存知でしょうか?
日本でよく聞く名前は、タラバガニ、ズワイガニ、毛ガニなどがありますが、世界を見渡せば、およそ4400種ほどあるそうです。もっとも全てが食べられるわけではありません。
そこで、アメリカもしくは近海で捕獲でき、食卓を飾ってくれる蟹の種類にはどんなものがあるのか、主にカニのどの部位を食べるとよいのかに基準を置いて、整理してみることにしました。
アメリカの蟹の種類
全体を楽しめる蟹
“Blue Crab”
ブルークラブは名前の通り、体の特に爪先の部分にかけて、鮮やかな青色をした蟹です。ラテン語名の、“callinectes sapidus” には、“beautiful swimmer” という意味があるそうです。
大西洋岸からメキシコ湾にかけて、アメリカでは、バージニア州、ノースカロライナ州、ルイジアナ州、ニュージャージー州などに多く見られる、小ぶりのかにです。
特にやや北部に位置するメリーランド州の特産になっており、4月から12月にかけてよく獲れます。体の青色は、調理すると普通のカニ同様、赤っぽくなり、クラブケーキにしたり、スープに入れてもおいしいです。
“Dungeness Crab”
ダンジネスクラブは、地元ワシントン州では、冬のシーズン中に何度も食べるおいしい蟹で、北米西海岸、つまり太平洋側の、アラスカからメキシコ辺りまで幅広く見つかる種類です。体は茶色から赤紫っぽい色をしています。
このカニは、ワシントン州のオリンピック半島にある、ダンジネスという小さな街の名前から付けられました。スーパーでよく手に入るのは、1キロ前後の重さで、茹でてそのまま食べるのが一番です。クラブビスクにしてもいいかな。
私はいつも茹でた物しか買いませんが、アジア系の店の水槽には、生きたダンジネスを売っているところが多いです。一般人でも許可証があれば手軽に獲れるのですが、体長が少なくとも6インチ(約15cm)以上あるオスの蟹のみと、法律で定められています。
ちなみに、日本名では、アメリカイチョウガニと呼ばれてるんですね。今回調べてみて初めて知りましたが、ワシントニアンとしては、何かピンときません。
“Peekytoe Crab”
メイン州東部でよく獲れる蟹で、地方の方言で、“picked toe” とか、“pointed toe” という意味から付いた名前です。当初、ロブスターを捕獲するフィッシャーマンにとっては、餌を食い荒らす迷惑なかにだったのです。
“rock crab” に属する種類のかにで、他にも、“bay crab” や “sand crab” と呼ばれることもあります。身は、他のカニに多い白さはなく、ほんのり桃色か、ややクリームがかった色をしており、塩味と甘味がミックスしたような味です。
“Soft-Shell Crab”
ソフトシェルクラブは、日本の居酒屋さんでも人気の一品だと思います。ブルークラブと同じ学名を持つ蟹で、成長するための脱皮の途中、外の硬い殻が取れて、次の新しい殻ができるまでの間を縫って捕獲される種類です。
年に2~3回しか脱皮しないカニのことなので、そのタイミングをとらえて捕獲しないといけないため、どうしても割高になるわけです。揚げ物にして、全体を丸ごと食べられるのが特徴です。
主に足がおいしい蟹
“King Crab”
名前の通り、蟹の王様的存在です。アメリカではその産地から、アラスカンキングクラブと呼ぶことが多いです。日本のタラバガニですね。同じ仲間だけでも18種類くらいあるらしく、赤以外にも青や茶色から黄金色をしたものまであるそうです。
食用のかにの中では最大級で、巨大なものになると10キロ越えもあると聞きます。でも、食べられるのは全体の4分の1位で、主に足と爪の部分。その棘棘の足だけでも人間の身長(1m80cm)くらいあるというからびっくり!
他のカニたちは、爪以外で、普通左右4本ずつの8本足なのですが、キングクラブは全部で6本だけ。爪にも特徴があり、その他大勢の蟹の爪は対称的ですが、このかには、片方が大きく、”killer” の役目をし、もう片方は小さく、”feeder” と呼ばれています。
ここまで大きいと、やはり漁もかなり危険を伴うらしく、値段が高くなるのも納得です。スーパーで売っているのは、調理後冷凍された足の部分ですが、身が崩れることはなく、リッチでしっとりしたまろやかな味は、特別なディナーに最適です。
“Snow Crab”
スノークラブは、北極海からベーリング海や日本海にかけての非常に冷たい海水や、アメリカでは主に大西洋側ですが、太平洋側にも、幅広く存在する蟹です。日本では、ズワイガニに相当するかにですね。調理した後の身が純白なことから名前が付いています。
“king crab” に対して、カナダではこちらを時々、“queen crab” と呼んでいます(さすが、英連邦の国ですね)。また、その細い華奢な足から、“spider crab” の仲間でもあります。他には、“tanner crab” と呼ばれる種類もあります。
細長い足の殻はとても軟らかく、器具がなくても手で簡単に割って食べることができるため、アメリカではもっぱら、”All-You-Can-Eat” タイプのレストランで大量に出てきます。キングクラブと一緒で、スーパーでは調理済のものだけ売っています。
爪の部分を食べる蟹
“Stone Crab”
ストーンクラブは、主にフロリダ州で獲れるので、“Florida stone crab” と呼ぶことが多いです。“morro crab” という別名もあります。食べられるのは、非常に硬くずんぐりして、先が黒くなった殻の爪の部分で、身はしっかりしてマイルドな甘さがあります。
10月15日から3月15日までの間、漁師さんはこの蟹を捕獲後、7cmくらいある爪を1つだけ切り離すことが許されています。あとは海に返すのです(両方取ると生活に困りますからね)。すると約1年半くらいで、爪が再生されるのです。サステイナブルですね。
爪は茹でた後、ヨウ素の臭みが残らないように冷凍されます。他の冷凍魚介類にも言えることですが、家庭で解凍するときは、冷水にさらすと味を失うので、冷蔵庫で時間をかけて解凍した方がいいです。
“Jonah Crab”
ジョナクラブは、ノースカロライナ州で一番よく獲れますが、東海岸沿いのフロリダ州北部からやメイン州にかけ、カナダに至るまで生息する種類で、見かけは西海岸の人気種であるダンジネスクラブによく似ています。
ピッキートウクラブ同様、漁師さんがロブスターを獲るときに、よく一緒に引っかかってきて疎まれていたそうですが、そのうち、他の高いカニの代用になるとわかってきて、大量に捕獲するようになりました。
体は小ぶりですが、ほぼ年中獲れるのが魅力で、大きい爪の部分に身がしっかり入っていて、ほんのり甘味のある蟹です。いろんな調理法で食べることができます。
ワクチン作りに貢献する蟹
“Horseshoe Crab”
容易に想像できますが、このかにの形が馬蹄に似ているから付けられた名前ですね。生きた化石とも言われ、先祖をたどれば数百万年前になるというから、由緒あるカニです。
大西洋岸だけではなく、広くアジアでも、日本からフィリピンやインドに至るまでの海岸でも見つかっています。日本では、カブトガニとして知られている種類です。厳密には蟹と同類ではないらしいのですが。
身はわずかながら食べられるものの、貴重な部分は血なのです!その血は青い色をしていて、人の体に入れる薬やワクチンが、バクテリアに汚染されてないかを調べる時の化学反応に使われるそうなんです。
で、このかにから血を抜き取った後、また海へ戻すと、大半は生きながらえて、血を再生できるというから、驚異の生命力ですよね。やっぱり生きた化石!人間のために存在してくれるホースシュークラブ様様です♪
アメリカで蟹を獲るときの注意
日本で一般の人が、自分で家庭用に蟹を獲ってきて食べるというのは、あまりないことだと思うのですが、アメリカでは普通にあります。もちろん、海に出ていける簡単なボートと、捕獲用のかごは必要ですけどね。
あと、簡単に取得できるカニ捕獲用の許可証もいります。安価ですぐ取れますが、かにの種類によっては、捕獲量を記入するレポートカードの提出も義務付けられます。
そうすることによって、漁師さんも連携して乱獲のないように、人気のかにを大切に守っているのですね。特定の種類に関しては基本、メスの蟹は獲ってはいけないことになっているので、網に引っかかったら、海に返さないといけません。
一匹や二匹、見つからないでしょう、と思っていると、あとで痛い目に遭います。カニではなかったと思うのですが、ある外国人居住者が、レクレーション漁で何らかの違反をしたことが記録に残り、市民権を申請しようとしたときに却下された事例もありますからね。
こうして蟹の話をしていると、食べたくなってきました。日本にいた頃は、カニを丸ごと1杯食べるなんて贅沢、という感覚があったのですが、アメリカに来てから、シーズンになると、よく食卓に出すようになりました。
獲れたてを冷凍せずに茹でた状態で売っているので、何もつけずに食べてもおいしいのです!牛へレ肉や高級魚より安く手に入るので、冬の間の楽しみな食材の1つです♪
私はワシントン州在住なので、人気ナンバーワンのダンジネスクラブで大満足していますが、他の州へ旅行した時には、普段食べられない種類も味わってみたいと思っています。