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サウスカロライナの食べ物を見ていくと、敢えて言うなら、歴史の傷跡も色濃く反映しているように思います。チャールストンは、アメリカの南北戦争が始まった場所なんですね。
アフリカから奴隷がたくさん連れてこられた当時、ほとんど食べる身がないようなナマズのシチューや、栽培していた余剰ピーナッツをゆでて保存したりしてたものが、いつしかローカルに定着していきました。
赤道直下や熱帯地域に住む人々は、ホットスパイスを好みますが、奴隷人口の多かったサウスカロライナの食べ物にも辛い物がよく出てきます。
激辛好みは食べ物にとどまらず、アルコールドリンクにも影響している一方、南部で人気のスイートティーもあったりと、幅広いテイストが楽しめそう♪。
サウスカロライナで人気の食べ物
肉類
Barbecue
バーベキューと言えば、今ではどこにでもある普遍的な料理のようですが、実はサウスカロライナ生まれなのです。5世紀も前にやってきたスペイン人が、土着のネイティブ・アメリカンから学んで広めたもの。
ソースにしても地域によって特徴があり、最も一般的なトマトベースの濃いソースは、主に北西部から西の山側が中心。中央部ではマスタードソースが主流で、海岸沿いになると、お酢と胡椒のライトなソースが盛んです。
Chicken Bog
スローフード・クッキングで、鶏を丸ごと使い、チキンストックに玉ねぎや燻製ソーセージにスパイスを入れてじっくり煮込んだら、チキンを取り出して骨や皮を除き、米と一緒に鍋に戻して、液体ががなくなるまで調理します。
サウスカロライナのローカントリーでは、“Loris Bog-Off” という毎年恒例のフェスティバルが10月に行われ、このチキンボグがふるまわれます。
Meat’n Three
サザンクッキングで定番のコンセプトは、レストランに行ったら、肉を1種類と副菜を3種類選んでプレートに載せるというもの。サイドディッシュには、野菜各種に加えて、パンや麺類の他、場所によってはデザートの組合せもあり。
Southern Fried Chicken
省略して言っている「フライドチキン」というのは、そもそもこのサザンフライドチキンのことなんですね。つまり南部の州から来た食べ物であるということ。外の皮がカリッとしていて、中の肉はふんわり。
伝統的には、鶏を揚げるのはラードかベーコン脂を使います。まぶす粉には、塩胡椒以外に、パプリカやガーリック、カイエンペッパーなどを混ぜたスパイシーな味が特徴です。
シーフード
Fried Seafood
アメリカの海岸線沿いの州ではどこでもフライドシーフードが人気ですが、サウスカロライナでは、ミュレルズ・インレットが州のシーフード・キャピタルと呼ばれているそうです。
そこで有名な、“Hot Fish Club” の原点は18世紀まで遡り、当時からホットな社交クラブとして盛んで、食通たちの舌を楽しませてきました。サイトで豊富な写真入りのシーフードメニューを見ると、思わず食指が動きま~す♪
Oyster Roast
オイスターローストは、サウスカロライナの海岸沿いのローカントリーでの伝統的なイベント。この地域では年中新鮮な牡蠣が供されるものの、やはりオイスターが美味しいのは、俗に言う、英語の月の名前に「R」が付いた9月から4月の間。
中でも極寒の11月から2月にかけてが最盛期で、地元のレストランでは獲れたての牡蠣を豪快にローストし、シンプルにレモンやホースラディッシュ、またカクテルソースやシャンパンソースなどで味わうのです。
Shrimp & Grits
サウスカロライナを始めとする海岸沿いの南の州では、海老とグリッツのコンボというのは、元々漁師とその家族が食べる朝食メニューだったのですが、一般に広く知れ渡るようになってからは、ランチやサパーにもいただくようになりました。
野菜・果物
Carolina Reaper
カロライナ・リーパーというのは、とても辛いペッパーの種類。その尾っぽの形から、リーパーという怖い名前が付いていますが、サウスカロライナのロックヒルにある温室で作られました。
一時期、世界一辛いペッパーの地位を得たくらいで、そのスコビル値は約180万というから、辛さの度合いは想像をはるかに超えています! ちなみにハラペーニョ・ペッパーで、せいぜい8千くらいです。
Hoppin’ John
またの名を、“Carolina Peas and Rice” と言い、サウスカロライナ州からジョージア州北部にかけて広がる島々の周辺にルーツがあり、新年の伝統的な料理になっています。というのは、豆はコイン(硬貨)のシンボルだから。
一説には、ジョンという老人が豆と米をチャールストンの通りで売り歩いていたからだとか。黒い目の豆と豚、米とトマトや玉ねぎにパプリカといった野菜類を一緒に調理していただくことで、新年にその年の繁栄を願うわけです。
Hush Puppy
ハッシュパピーは、今ではどこでもよく見かけますが、元をたどれば、どうもサウスカロライナで生まれたようです。その昔、コーンミールに野菜を混ぜて団子状にして揚げた食べ物によく似た、“red-horse bread” というものがありました。
それがジョージアに渡って、“hushpuppies” と呼ばれるようになり、更にフロリダに伝わり、その後広く知られるようになったとか。名前の意味としては、ある解釈では、ハンターが犬を静かにさせるために作ったスナックだったそうです。
Peaches
サウスカロライナは、全米でカリフォルニア州に次いで桃の生産量が多い州となっています。ジョージア・ピーチも有名ですが、比べてみると、サウスカロライナ州の桃の方が全体にやや大きくジューシー。
ガフニーでは、毎年7月にピーチ・フェスティバルが行われ、カントリーミュージックを聞きながら、甘い桃を楽しむことができます。この街には桃の形をした、“Peachoid” という給水塔があり、「桃の首都」と言われています。
粉物・穀類
Carolina Gold Rice
米は、20世紀初頭までサウスカロライナを代表する農産物でした。このカロライナ米は、18世紀の終わりごろから盛んになったアフリカ産の長粒米の一種で、その黄金色の輝きから名前が付きました。
Grits
トウモロコシの身を挽いて粉状にし、茹でたものがグリッツで、オートミールと同じように朝食にいただくことの多い食べ物です。長年南部の州の主食の位置を占め、サウスカロライナでは海老と組み合わせた料理が人気。
最初は白い色だけでしたが、戦後は良い挽き機も開発され、黄色や赤、青に加えて、バイカラー・コーンのように白と黄色のまだら色も出るようになりました。
Gullah Red Rice
サウスカロライナの海岸沿いにあるローカントリー地域で、奴隷制が敷かれていた頃のアフリカ人の祖先である、“Gullah Geechee people” (ガラ族とギーチー族)がもたらした食べ物です。
玉ねぎやパプリカなどの野菜とソーセージをトマトソースで煮込んだところにご飯を加えて混ぜ、オーブンに入れて焼き上げるという料理で、チャールストン・レッドライスとか、ローカントリー・レッドライスとも呼ばれています。
Perloo
ペルルーと発音するのでしょうか? そもそもこの米料理の範囲は幅広く、ルイジアナではジャンパラヤ、フロリダのスペイン語圏ではパエリアに近い食べ物です。
サウスカロライナにおいては、ともかく低予算で、1つの鍋でできるお手軽な一品で、海老やチキンを使うことが多いのですが、特に肉の種類を限定しているわけではなく、上記のレッドライス同様、ローカントリー・ペルル―と呼んだりもします。
スープ
Catfish Stew
アメリカ南部の州、特にサウスカロライナで人気の「ナマズのシチュー」は、ナイジェリア方面からの奴隷貿易時代に持ち込まれた食べ物です。特に大恐慌時代にお腹を満たしてくれるスープの代表でした。
今でも毎年料理コンテストが行われています。一般的には、トマトをたくさん入れて作るのですが、トマトの代わりに牛乳を使うレシピの方は、“white catfish stew” と呼んでいます。
Cooter Soup
チャールストンの伝統的な料理の1つで、要は「亀のスープ」です。18~19世紀に人気を博した食べ物で、人々が集まって一緒にこのスープを楽しむ、“turtle frolics” という集まりがあります。
Frogmore Stew
ローカントリーの夏真っ盛りに、獲れたてのシーフードに、ソーセージや地元で収穫したコーンや玉ねぎにジャガイモを1つの鍋に放り込んで煮て、大きなテーブルにぶっちゃけてみんなで楽しく食べるという、ワンポット・ディッシュ。
他にもいろんな呼び方があるのですが、この名前のシチューは、特にチャールストンとサバンナ周辺で呼ばれている名称で、“lowcountry boil” とも言うし、広くは、“Carolina One-Pot” という言い方もあります。
She-Crab Soup
サウスカロライナのクラブ・ビスクのことです。リッチなクリームと蟹の身に加え、雌の卵も加わった濃厚なスープ。ちなみに、許可証があれば一般人でも蟹を獲ることはできるのですが、州によって子持ちの雌の蟹の捕獲を禁止しているところが多いです。
スナック
Boiled Peanuts
19世紀初頭のまだ奴隷制が残っていた頃、夏の最盛期に収穫されたピーナッツの余剰分が、保存の為にゆでられました。これが結構美味しくて、南部料理のシンボルになっていったのです。
濃い塩水で何時間もかけてゆでると、塩味の効いたとても軟らかい茹でピーナッツが出来上がります。皮をむくのも簡単で、缶入りでも販売されており、中にはケイジャンスパイスで味付けしたものもあります。
Pecans
ピーカンナッツは、サウスカロライナの主要産物の1つ。私にはどれも同じに見えますが、実際には500種類以上あるそうです。中でも評判が高いのは、“Cape Fear” という木だとか。
フローレンスにある、“Young Plantations Pecans” では、多種多様なピーカンスナックギフトを備えていて、オンラインで購入できますが、もし足を運ぶ機会があれば、ピーカン・テイスティグバーで、実際にいろいろ味試しをしてみるといいですね♪
その他
Carolina Gold Sauce
バーベキューソースというと、普通想像するのは焦げ茶色だと思いますが、ノースカロライナのBBQソースは黄金色なのです。歴史家によると、ドイツ移民の伝承のようです。
マスタードに蜂蜜やブラウンシュガー、アップルサイダービネガーなどにスパイスが各種加わった甘酸っぱいソースで、油っぽいプルドポークなどの食感を程よく中和してくれます。
Chow-Chow
犬のチャウチャウではありません。これはアメリカ南部に伝わるピクルスの類です。フランス語で「キャベツ」のことを、“chou” ということから、このような名前になったのではという説もあります。アメリカ北部に伝わるものとは少し違います。
サウスカロライナ・スタイルは、キャベツかグリーントマトを主体に、玉ねぎやパプリカ、ホットペッパーやニンニクなどに、マスタードシードや他のスパイスを加え、メイソンジャーに入れて酢を注ぎ、一晩置いてバーガーやビスケットに添えていただきます。
Duke’s Mayonnaise
デュークのマヨネーズは1917年に、兵士にサンドイッチを供給する際、サウスカロライナのグリンビルで作られたのが始まりです。その後オーナーは変わりましたが、米国では3番目に大きいブランドで、やはり南部で根強い人気があります。
コールスローやデビルドエッグ、ポテトサラダなどを作る際には欠かせません。特徴を挙げると、他のマヨネーズよりも多くの卵黄を使っており、リッチでクリーミーな食感。また砂糖を加えていないというのもいいですね。
デザート
Benne Wafers
ベンヌというのは、バンツー族の言葉で「ごま」を意味していて、植民地時代の18世紀に、アフリカからサウスカロライナにもたらされたもの。ローカントリーで大量に栽培したゴマをトーストして使い、とても薄いウエハースに仕上げました。
観光に来た人もお土産によく持ち帰るクッキーですが、甘いお菓子としてだけではなく、ピメントチーズを塗ってカナッペのように使ったりもします。“Olde Colony Bakery” では、今も百年以上も前のオリジナルレシピを使って作っています。
Huguenot Torte
サウスカロライナの最も有名なデザート。名前はトルテとなっていますが、いわゆるケーキという部類ではなく、ピーカンとりんごのクリスプといった感じ。どうも元になっているのは、テキサスの “Ozark pudding” のようです。
何でも、ユグノー・タバーンで働いていたエブリンという人が、故郷に帰った時に知ったオザークプディングを、1950年にチャールストンのパブで作り直して出したのが始まりだとか。ちなみに、このデザートはトルーマン大統領の好物だったそうです。
Lady Baltimore Cake
サウスカロライナの伝説のケーキです。他説もありますが、一番有名なストーリーを紹介しておきます。両家の子女が若いときに社交界デビューをするための舞踏会を、“debutante” と言います。
そこである乙女が自身で作った「バルティモア婦人のケーキ」を、チャールストンに住むロマンス小説家のオーウェン・ウィスターという人に差し出したんですね。
オーウェンはそのケーキの味が忘れられず、後に “Lady Baltimore” という同名小説を書き、語り手がこの女性に恋に落ちるという話を作りました。
どんなケーキかというと、ナッツやフルーツを仕込んだレイヤーケーキで、メレンゲのトッピングを施してとても軟らかく仕上がっており、作家はこのケーキの話をしただけでよだれが出てくるなどと語ったとか。20世紀初頭の伝説でした♪
サウスカロライナで有名な飲み物
アルコールドリンク
Blenheim Ginger Ale
サウスカロライナのブレナムジンジャーエールは、伝統的な手法で作られており、恐らく最もスパイシーなジンジャーエールと言えるかもわかりません。
あまり州外には出てないようですが、多くの州ではオンラインでも手に入ります。安全圏で試したいときは5番。ダイエットの人は9番。特大の刺激が欲しい人は3番がいいでしょう。
Bloodly Mary Mix
サウスカロライナの人々は、やっぱりお酒が好きなようです。しかもスパイシーなのが。オリジナルのチャールストン・ブラディ―メアリー・ミックスには、ハバネロの他各種スパイスが入っていますが、MSGや高フルクトースも使わず、品質の良さを誇っています。
Planter’s Punch
ジャマイカ生まれのパンチなのですが、チャールストンにあるプランターズホテルで出されて、人気を博しました。ダークラムにシトラスジュースをたっぷり使い、ビターズをミックスしたカクテルは、夏の風物詩です。
ノンアルコールドリンク
Sweet Tea
18世紀に紅茶の木がサウスカロライナのサマービルに輸入されたのが始まりです。2016年の6月10日に、15フィートの高さの世界最大のメイソンジャーの形をした容器が登場して世界記録を打ち立て、2500ガロンのスイートティーを振舞いました。
Summerville では9月の終わりに、“Sweet Tea Festival” が行われ、歴史あるダウンタウン地区はオープンハウス状態になり、ベスト・スイートティーを競い合います。
サウスカロライナの食べ物は気に入っていただけましたか?
マヨネーズはやっぱり日本のキューピーだと思っているので、はっきり言ってアメリカのブランドにはあまり興味がなかったのですが、いつも行くスーパーの棚をよく注意してみたら、ワシントン州でもデュークのマヨネーズを売っていました。
今使っているのが切れたら、試してみるつもりです。私が個人的に興味を持ったのは、デビュタントで提供されたケーキにしびれてしまい、ロマンス小説まで書いてしまった作家の話。
いや、やっぱりいつの世も、男性をコントロールするのは胃袋が早いようですね♪